前稿は不登校のメカニズムを考えました。
ここからは、保護者はいつ、何を、どうすればいいのか、具体的な対処法を見ていきます。
もちろん、保護者の対応だけで解決できず、専門家や専門機関の手を借りることもあると思いますが、児童精神科外来の初診は、全国的に数か月~年単位の待ち時間となっていますし、専門外来が近くにないこともあるでしょう。
待ち時間も焦らないように、粛々と家庭内でやれることを提案します。
心も身体も栄養状態がベース
まず、全年齢・どの時期でも取り組んでほしいのが、心の逞しさを鍛えること、その中でも特に重要かつ簡単なのが「栄養状態の改善」です。
ここに4つの要素を上げていますが、1,2,3は、逞しさを損なう原因でもありますが、逞しさがなくなった結果でもあります。
そして1,2,3は、専門家に入ってもらって解決したほうがいい場合も多く、家庭だけで完結するのが難しい要素です。
でも4.栄養状態 は違います、家庭内で簡単に取り組むことができます。
その上、心理的問題も健康状態も、ベースとして栄養状態が大きく関わります。
なのでまず、最初に取り組むのが、栄養状態の改善です。
栄養状態の改善
栄養の改善は介入の心理的ハードルも低いので、まず取り組んでほしいです。
どんな栄養が大事かは…当ブログでは過去にもたくさん言及しています。
栄養がしっかり満たされることで、脳の活動があますところなく行われるようになります。
*
人の脳は、危機(ストレス)に出会うと、危機対応に全振りする特徴があります。危機対応はよく知られているように、「闘う or 逃げる or 固まる」のどれかしかなく、思考など高次の脳機能は制限されてしまいます。
不登校はこの状態と言えます。
そして、危機が大きくないと“判断”し危機体制を“解除”するのは、「高次の脳機能」で、危機対応よりも優先度の低い機能なので、栄養その他が満たされてないと十分に活動できず、危機対応を解除することができません。
*
具体的な栄養の盛り方は、過去記事から抜粋しますと……
それぞれ、1~3.4の順に重要です。1から取り組んでみてください。
たんぱく質と鉄分については、詳しくは過去記事(↓)も参照ください。
繰り返しますが、重要なのは「たんぱく質と鉄分」です。それも、たんぱく質>鉄分です。
私は、子供の場合は、習慣を作る時期でもあり細胞にも若さがあるので、基本的には鉄以外のサプリをお勧めしていません。
食事で十分なたんぱく質が摂取できるようになれば、サプリは必要なくなると思います(月経のある女性の鉄は別)。
サプリで治そうと考えるのではなく、あくまでたんぱく質が食べられるようになることを第一の目標にして、サプリのビタミンミネラルは補助と考えてください。
心理的な要素
上のリスト、1、2(、3)についてですが、栄養状態が整ってくると、今まで問題に見えていたものが問題とはならなくなることも多々あります。
その意味でも、子供だけでなく「親もきょうだいも」たんぱく質を積極的に食べてほしいです。
以下記載していますが、決して、自分たち家族や子供の状態が「こうだ」と決めつけることなく、変化していくものだという楽観性を持ってほしいと思います。
家族関係など
「家族関係:家庭が安心できる環境か?」は、子供の心の逞しさにかなり重要で、おそらく感覚的には理解できる方が多いと思います。
けど……虐待やDVは当事者が解決するのは難しいので、もし家族の関係に疑問があれば、無理せず専門機関を頼ることが、結果として子供の利益につながると思います。
*
また、家族の問題の歪みの、子供が受け皿になっている場合もあります。
直接子供とは関係がなくても、問題を抱えた家族がいる…とかですが、第3者の目がないとわからない場合も多いです。
例えばDVや介護など分かる範囲の問題は、問題を先送らず解決を目指してほしいところです。
夫婦の不和、きょうだい間の確執は、頑張れば専門家の手を借りず家族内で解決できる場合もあります。
夫婦関係は私の観察では、この先どうなるかわからない不安な状態や、毎日罵り合ってるよりも、立場をはっきりさせてしまった方が、子供のメンタルは落ち着いてくるようです。
仲良くできるならもちろんそうしてほしいですが、決定的に無理なら、あまり引っ張らずに離婚や別居を決断したほうがいいかもしれません。
きょうだい間の確執は、両親のハンドリング次第で解決できることが多いと思います。
とはいえ、きょうだいだから仲がいいとは決まらないので、うまが合わない同士は、無理に仲良くさせるよりぶつからない様にしてあげる方が、いいこともあります。
どちらかに肩入れせず、どちらの言い分も聞いて、えこひいきせずを心がけるのが重要です。
また、きょうだいが重い慢性疾患で闘病中というケースでは、最近では「きょうだい児のケア」というジャンルで支援の動きもあります。
必要があれば、支援グループなど調べてみるといいでしょう。
心理的問題:不安、柔軟性、自己認識など
本人の心理的問題は……
発達障害など生まれついての不利さはありますが、それは程度の問題で、基本的には心の逞しさに影響する要素は発達特性によらず同じです。不安、柔軟性、自己認識などです。
前章に書いた『危機が大きくないと“判断”し、危機体制を“解除”する高次の脳機能』は、不安に対する耐性や心の柔軟性に関わります。
過去記事にも書きましたとおり、発達障害の特性そのものが栄養の不足によって生じている側面もあります。
つまり、どのような心理特性で生まれてきていても、栄養状態を改善することで、心は逞しくなっていきます。まず栄養が大事、というわけです。
*
自己認識とは、「自分は○○な人間である」という認識です。○○には様々なものが当てはまりますし、自己肯定感も自己認識の一部です。
心の逞しさには、「自分は大丈夫だ」という認識が関連します。
心が弱った時、人は「自分はダメな人間だ」と思いがちですが、一過性で済めば特に問題にはなりません。
でも、子供の場合は、自己認識を育てている最中なので、できるだけ「ああダメだ」と思わない、思ってもすぐに立ち直るように、導いてあげたいところです。
子供の自己認識は、「子供にとって重要な立場の他人からの評価の影響」を強く受けます。
具体的に言うと、親、親が大切にしている人たち(親戚や親が所属するコミュニティメンバー)やその子供たちです。
意外かもしれませんが、学校の先生や級友は、学校生活での自己認識には影響しますが、心の逞しさには影響は薄いものです。ここは親の方が重要です。
自己認識を育てるのに影響するのは他人からの評価ですから、親が子供をどう評価するか、が重要ということです。
褒め方、叱り方が大事だというのは、よく知られていると思いますが、それと同じで、声かけや態度が重要になります。
褒め方、叱り方は別記事にいずれ書こうと思いますが、ここでは、
この4つを心がけてみてほしいです。
失敗しても「大丈夫」だった、親は自分を信じてくれている……このような体験の積み重ねが、心を逞しくしてくれます。
次稿……不登校の時期、年齢などに応じての具体的な対処法を考えます。
コメント