子供が不登校になった時③;具体的な対処

子育て

子供が不登校になった時①不登校のメカニズム②心の逞しさの鍛え方、に続いて、不登校の時期別に具体的な対処法を見ていきます。

*本稿は、主に不登校のパターン(①不登校のメカニズム参照)の1.ずっといい子だったパターン向けです。

反抗によって不登校になっているケース(“2.問題児のパターン”)では、子供本人は“いい子のパターン”と同じように葛藤かっとうを抱えていますが、親のいう事は聞きにくく、家出など学校だけではなく家からも遠ざかることが多い状態です。また、発達障害が背景に隠れている場合もあります。
家でやれること(②心の逞しさの鍛え方)は同じですが、葛藤が強く効果も出にくいため、早めに専門機関に相談することをお勧めします。

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不登校の全体的経過と対処法:特に中学生以下

前々稿で、不登校のメカニズムを見ました。
「行きたくない理由」と「心の逞しさ」の兼ね合いで生じますが、きっかけとしては「行きたくない理由」が見えることが多いです。

学校に行きたくない理由
  • いじめ、先生との相性など、人間関係のストレス
  • 両親の期待に応えられないストレス
  • 勉強がわからなくてつまらない
  • 他に心配事がある

でもその理由(きっかけ)にこだわることなく、「心の逞しさ」をつけることに注力してほしいのは、前稿に書いた通りです。

それを踏まえて、不登校の典型的な経過と対処法を見ていきます。

不登校の初期


「学校に行きたくない」とか「体調が悪い」とかで、欠席が多くなる時期です。

前々稿に書いたとおり、子供たちは「学校に行きたい=行くことが立派である」と無意識下で感じているので、この時期の子供は強い葛藤の中にあると思った方がよいです。
つまり、機嫌が悪かったり、反抗的になったり、自暴自棄な行動をとったりするのが、“普通”ということです。

体調が悪いのも、休むと元気そうに見えますが、仮病ではなく葛藤の現れです。中には、本当に熱を出して、病院で検査を受けて「心因性の疑い」と診断される子もいます。

子供の不登校は、親の自尊心をもまた傷つける状態でしょう。子供の葛藤とともに、親子の葛藤が高まってるケースもよく見ます。

でも、子供は親におろおろされたり叱られたりすると、余計に自分のダメさを意識してしまいます

反抗されて腹が立ったり心配になったりすると思いますが、ここは大人の意地で余裕を見せてほしいです。
内心はどうでも、「まぁ、そういう事もあるよね」という態度を表に出せるように、心がけてください。


またこの時期には、「学校を休む理由」が見えやすい時期です。
なにか「きっかけ」があるのかは、子供の拒否がなければ、探ってみましょう。

特に、「勉強が分からない」「他に心配事がある」の場合は、それを解消すると登校できるようになることも多いです

「勉強が分からない」場合は、支援級に移ることで不登校が解消することはよくあります。
また、視力、聴力など、授業をうける基本的な感覚の問題が隠れている場合もあります。眼鏡をかけたり、自閉傾向等で聴覚の過敏が強い場合等はその対処を考えることも、有用です。


「他に心配事がある」は、いじめなど対人関係のストレスと同様で、聞かないと答えてくれないことも多いでしょう。

よくあるのは、「先生と確執がある」「家族の問題」などです。

先生との確執は、打ち明けてくれる場合は、本当に悩んでいる場合が多いです。
子供ならではの心の狭さ(先生との相性の問題)の場合も、本当にあり得ない対応をされている場合もあります。

勉強ができなくて(または発達障害の特性で)問題児扱いされている場合も、勉強ができる子が目の敵のように扱われる場合もあります。
コロナ対応で人権侵害まがいの行為や、先生主導での差別・いじめが行われている話も聞きます。

先入観なく聞き、必要があれば親が介入・相談(信頼のおける第3者:教頭や校長など)してください。


家族の問題は、打ち明けてくれることはあまりありません。子供本人も無意識の過程なので、それが不登校の理由とは意識していないのでしょう。

多くは、問題が解決したときに、勝手に子どもの状態も改善することで、理由として見えてきます。ちなみによくあるのは、両親の離婚・再婚問題、家族の闘病問題(特に親きょうだい)です。

家族の問題については、子供を問い詰めると逆にストレスを与えることにもなりかねないので、ある程度話を振っても子供が否定するなら、深入りしない方がよいと思います。「
「心の逞しさ」をつけることに、注力してください。

いじめ等への介入

この時期に必ずしてほしいのは、「いじめがないか?」聞くことです。

まず前提として…いじめの言説では常識になっていますが、子供は親にはいじめの事実を打ち明けるのが難しいことは知っておいてください。心配させたくない、いじめられるような子だと思ってほしくない、などの気持ちなのでしょう。

だから、聞かなければ話してはくれません。聞いても「ない」と答えるかもしれませんが、不登校は子供のSOSです。勇気をもって聞いてください。真剣に聞く気のある大人には、打ち明けてくれるものです。

その時の注意点ですが、子供は親を心配させたくないしダメな子とも思われたくないのです。
過剰な心配や、「やり返せ!」などの強さの強要の態度が見えると、打ち明けづらくなります。感情的にならずに、子供を評価ジャッジせず、事実を聞き出す事を心がけましょう。


もしいじめが発覚した場合、学校と事実を共有し解決をはかっても、不登校が解消しないことがあるのは前述の通りです。特に年齢があがるほど難しい印象です。
きっかけ(この場合はいじめ)にこだわり、登校できない子を責めたり、必要以上に学校や相手の子ともめるのは得策ではないと思います。
先生との確執も同じですが、学校に働きかけるかどうかは、子供と意思統一をはかったほうがいいでしょう。

逆に低年齢の子の場合は、再登校につなげられることも多いので、いじめや先生との確執などは、積極的に解消を働きかける価値があると思います。

不登校の持続期


休んだり登校したりの時期を過ぎ、定常的に休むようになった時期です。
表面的には葛藤は鳴りを潜め、穏やかな時間が過ごせることが多いです。

この時期は、年単位で続くことも多い時期です。
心の逞しさを鍛える時期、とも言えます。栄養をしっかりとり、英気を養うことが重要です。

この時期の対処法は、うつ病の家族の対応とも似ています。「休むときはしっかり休ませる!」ことが大事です。

不登校に焦る気持ちを封印して、休息を取らせることに注力してください。
経験上、中途半端に登校を促したり、勉強をさせたりすると、長引きます。

特に「親の期待に応えたかったいい子ちゃん」では、勉強する姿勢を見せたりすることが多いですが、むしろ止めさせた方がいいです。
「しっかり休もうね」「よくなってからでいいよ」と、勉強することより、元気になることを心から願ってる(元気になると心から信じている)…という態度を取るようにしましょう。

勉強するのを見て嬉しそうにしてしまったり、勉強しないのを見てため息をついたり小馬鹿にしたり「将来どうなるの?どうするの?」など煽るのは、逆効果です。

「本当に?自分に期待かかってない?」と心から感じられるようになると、やっと休息できるようになります。

学校に行かない時間の過ごし方

では、何をさせるか……遊びです。

遊びと言ってもおもちゃである必要はなく、本人の興味の向くもの(本、漫画、工作、家事など)で、受動的でなくアナログなものがベターです。

アニメ、Youtubeなど受動的メディアや、SNSやゲームなど射幸性しゃこうせいの高いメディアはお勧めしません。
と言っても、禁止にするわけではなく、不登校だからこそ、制限をきっちりする必要があるということです。

私は外来では、電子メディアについては、子供本人とだいたい以下のように話します。

  • 学校のある時間は不可(放課後や休日は親と決めた時間内で可)
  • 昼夜逆転を避ける(夜は切り上げる時間を親と決める)
  • できれば自室ではなく、居間で使う

学校に行かなくていい、勉強をしなくていい、代わりにメディアについての約束は守ること!、と交渉するわけです。
親が決めて一方的に指示するのではなく、子供と一緒に双方が納得できる条件を決める方が、守られやすいです。

学校の友達とのグループチャットなどがしんどい場合もあると思います。一切禁止、寝る時間は禁止などと決めてもいいですし、子供が自分で断るのがつらいなら、「親に禁止された」という理由を使わせてあげましょう。

オンラインゲームやSNSなど、不特定の他人とのつながりが生じるメディアはいい面と悪い面があります

「友達がわりになって支えてもらった」という経験談がある一方、外に出るインセンティブがなくなり、メディアの世界にはまり込むリスクもあります。有象無象の大人たちが子供を搾取さくしゅしようと待ち構えていることもあります。
私の患者さん(10代の女子)では、「お付き合いしている」として、二人で会おうと呼び出そうとする成人男性(30~40代)もいました。

無制限はお勧めできないので、完全に禁止にするか、時間制限などを守らせるか、親子できっちり話し合って決めてください。(課金についてもしっかり話し合った方が安全です)
また、年齢、居住地、不登校であることなどを、公開しないように教えることも必要ですし、ネット上で知り合った人と二人きりで会わせないように気を付けてください。


お出かけに関しては、やはり学校のある時間帯は家にいた方が本人も楽だと思います。
放課後の時間や休日は、習い事や家族旅行など、楽しめるなら好きに出かけましょう。

学校の勉強はつらいけど、塾は楽しいという場合もあります。家庭での自習はお勧めしませんが、塾は本人が楽しそうに通っていれば、続けてもよいでしょう。

定期通院などがある場合は、本人にとっても大手を振って休める理由であり、きょうだいなしで親を独占できる時間でもあります。楽しそうに通院してくる子は多いです、外来の後のお母さんとの外食を楽しみにしている子もいました。

外出の楽しさを存分に味わってもらえるとよいと思います。

再登校を考える時期


遊び倒して、飽きてくる時期です。

しっかり休み、しっかり楽しむと、英気が養われ元気になってきます。
そうすると、子供の体力気力では一人活動に飽きてきます。(この「飽きる」が重要なので、オンラインがあまりよくないと考える理由です)

「学校どんなかな…」「ちょっと行ってみようかな…」そんな言葉がでてくるようになります。

多くの場合、再登校のきっかけは、学期がわり、学年がわりです。
(経験上、クラスや担任が変わるかどうかはあまり関係ないですが、明らかにいじめがあったとか、特定の先生のことをものすごく嫌がるような場合は、あらかじめ学校と話し合い、当事者を避けてもらうように交渉ができます。)

適応指導教室などを利用する場合もあると思いますが、適応教室が出席扱いになる場合と、塾などと同じ扱いになる場合があります。
学校と適応教室の間で取り決めがあるので、確認しておくとよいでしょう。


いざ再登校を始めると、持ち前のいい子ちゃんが現れて、完璧に通おうとする子は多くいます。
親が完璧をめざしてしまうことも、あるでしょう。

でも、これは逆効果です。

「また休むようになったらどうしよう」と焦る気持ちはわかりますが、ここで大切なのは、学校は“行くか休むか”の2択ではなく、“疲れない範囲で適度に休みながら行く”という3つ目の選択肢を覚えることです。

休む前は、「頑張って頑張って頑張って…」結局つぶれてしまった子が多いでしょう。
再登校の時期は、つぶれる前に手を抜くことを覚える時期と、考えてください。

どのように登校するかは、授業や先生との兼ね合い、本人の生活パターンなどで変わりますので、ある程度子供本人に任せていいと思います。
親のすることは、「疲れたら休んでいいよ」と声をかけ、場合によっては、遅刻や早退をすすめることです。学校や先生との交渉は、本人に頼まれたら出ていく、くらいの距離感の方がうまくいきます。

本人は完璧主義がでやすいですし、先生の方も気合が入りすぎることが多いので、親はブレーキをかける方向の役割が、バランスが取れます。

休みを入れながら、少しずつ慣らしていく…イベント事も「参加したい/したくない」は本人の意思を尊重しましょう。

その後の進路の考え方

中3の場合~進路はどう考える?


中高一貫校以外の中学3年生は、英気が十分になってなくても、再登校しやすい時期です。
高校受験が視野に入るからです。
幸いな事に、中3の生徒は受験に意識が向いてくるので、友達同士の微妙な葛藤は少なくなり、クラスの居心地は良くなることが多いようです。

上述のようには元気が復活していない再登校なので、休み休みは同じですが、少しコツがいります。

登校の目的の多くは、内申書=出席日数となります。
学校によって運用が違うと思いますが、一日一度顔を見せれば出席扱いになる学校が多いようです。その一度が、例えば放課後でも認めてくれる学校もありますので、子供の通う学校がどういう方針なのかを、担任の先生と4月には確認しておいた方がよいでしょう。

その上で、内申書の関係ない学校を受験する場合は出席日数にこだわらないとか、受けたい科目だけ登校したいなど、子供によってニーズが違うので、どのタイミングで行き、どのタイミングで休むかを本人と相談し、サポートすることになります。

進路の選び方も考える必要があります。

まず、高校は義務教育ではないので、行かない選択肢もあることを伝えます。
親は進学してほしいとしても、本人が「無理やり行かされた」と考えるようでは、長い目で人生を見ると悪影響となるかもしれません。
進路はできるだけ、本人の希望で決めるようにしてください。

その上で、どんな進路があるのかのアドバイスをします。

高等学校の義務教育との大きな違いは、出席が足りないと進級や卒業ができないところです。留年すれば授業料は年数分多くかかりますし、放校になれば無駄になります。
この“お金のこと”をきちんと理解してもらった上で、進路を決める必要があります。

高等学校に通う目的の最大のものは「高卒の資格を取ること」なので、そこに最適化した学校を選ぶのが現実的です。
出席は6割とかの基準がある学校が多いですが、中学と違い日数で6割ではなく、教科ごとに6割を求められることが多いので、注意が必要です。


高卒の資格を取る選択肢には以下のようなものがあります。
他にもあるかもしれませんし、公立私立、通う距離など地域によりますし、4年制の学校もあったりそれぞれ違うので、早い段階でできれば中2までの間に調べておくといいでしょう。

  • 全日制:登校さえしていれば、試験は救済措置があり進学・卒業がしやすい。朝から通える子向け。
  • 定時制/午後制など:朝が弱い子は午後からの学校は通いやすい。夕方からの学校は、年齢層がまちまちなので、同年代の同調圧力が苦手な子には向いてる。
  • 通信制:家で一人で課題ができる子向け。体育など登校が必要な科目もある場合がある。
  • サポート校:高等学校ではなく、認定試験予備校の場合もあるなど、学校によって特色が違うので、よく調べる必要。
  • 高卒認定試験:学校には通わず、試験だけうけられる。勉強が得意な子むけ。


高校進学以外の選択肢には、各種専門学校のほか、就職などがあります。
但し、一般的に中卒の求人はほとんどないのが実情で、また、最近は中卒で入学できる専門学校も減っているようです。なので、結局高卒の資格を目指すのが、唯一の進路になりがちです。


しかし例外は、職人など手に職をつける系の仕事です。
以前と違い高卒大卒で職人の世界に入る方が増えているそうですが、依然として、中卒(できるだけ早いうちに)で入った方が腕が上がる、と言われる世界です。

私の知人に天才肌プログラマー氏がいますが、部下の採用は中卒が一番と言います。学校でプログラミング教育とか受けていない方が、癖がなくて教えたことをぐんぐん吸収するので、腕が上がりやすいそうです。

中学卒業後の進路は必ずしも進学ではないこと、特にやりたい仕事が決まっている場合、進学して年齢が上がることで不利になることもある、と知っておくとよいでしょう。

高校生以上の場合


不登校~再登校をめざす経過は、基本的には上の中学生以下の場合と同じです。

中学生以下と大きく違うのは、高校~は義務教育ではないことです。
しっかり休んで、こころの逞しさを鍛え、元気が出てきたら、上の章の、中3の「進路の選び方」を参考に、どんな風に復帰するか考えることになります。

休み中の過ごし方としては、日中の外出やアルバイト(校則で禁止されてなければ)も選択肢に入ります。疲れすぎず楽しめる活動は、やってみるとよいでしょう。

必ずしも、元の学校に戻るだけが選択肢ではないので、ひとつの道にこだわることなく、進路設計ができるようにサポートすることが大事です。
中学生以下よりももっと、本人の意思で選択してもらうことが重要な年齢なので、親の意見を押し付けることのないようにしたいです。

進路選びにまつわるお金の考え方


私立高、サポート校、専門学校など、中卒後の進路は費用が掛かるケースが多くなります。
不登校に限りませんが、お金の話は避けて通らない方がよいと思います。

どこまでなら出せるのか(例えば、公立か私立か)、何歳まで出せるのか、何留まで出せるのか…家庭によって考え方が違うのは当然です。でも、隠さず話すことは重要です。
社会人になって無制限に使いたいお金が使える環境にいる人はまれです。必ずそこに制限があることは、高校生以上(進路を考える中3も)なら知っておくことが大事です。


また、お小遣いもいつまで渡すのか、考えてください。
これは一つのアイデアですが、私は外来で中学卒業後の方の場合、「学校へ行くならばお小遣いをあげるけど、学校をやめた場合は遊ぶお金(ネット代含む)はバイトで稼ぎなさい」という方針を薦めています。
但しその際も、未成年のうちは“衣食住”の世話は保護者の責任です。食事、寝る場所(部屋)、衣服は親が用意してあげてください。前稿の通り、この年代でも食事は何より大事です。

お金の話は、厳しく感じる人もあるかもしれませんが、義務教育終了後の年代は親との距離を取っていく年代になります。いつまでも子供扱いしてしまうことで、子供として家にいることが居心地よくなってしまう可能性もあります。

子供の不登校で親側の一番の心配は「そのまま家から出られなくなるのではないか?」だと思います。
お金は、否がおうにも現実を突きつけてくれるものです。子供に現実の制限を示すことで、自分の力で人生を送る覚悟を決めていってもらう…そんな効果もあると思います。




次は、学校との付き合い方編です。

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