各論編;抗酸化活性を上げる~免疫その⑤

酸素は毒物!

学校で生物を習った人は知っていると思いますが、酸素は生体にとって毒性の強い物質です。
その毒性が、細菌やウイルスの感染した細胞、がん化した細胞を死滅させる武器として、免疫システムの中でも使われています。

それでも、私たちの身体は生きるために酸素を必要とします。
生体が使う”エネルギー”は、無酸素よりも酸素を使う方が、効率よく産生することができます。たくさんのエネルギーを得ることで、自由に移動する、考えるといった能力を獲得できました。人(呼吸する動物すべて)は、エネルギーを調達するかわりに酸素の毒性を引きうけるべく進化したと、言うことになります。

なので、身体は酸素の毒性を打ち消すシステムも同時に進化させました。それが「抗酸化力(抗酸化活性)」です。
抗酸化力は、活性酸素を介するさまざまな不調の抑制をするほか、生理活性物質として、活性酸素対策以外にもさまざまな生理機能に関わっています。具体的には、免疫反応の増強、抗ウイルス作用、肝臓での解毒促進、細胞(DNA)の老化の防止などです。
抗酸化活性が高いということは、免疫力だけではなく健康長寿に深く関わっていることになります。


酸素は、大気中にある”酸素=O2”が悪いのではなくて、体内に入り周りの物質を酸化させる活性をもった”活性酸素”と呼ばれる状態になったものが、毒性をもちます。
活性酸素には、数種類あるとされます。それらは、悪いばかりではなく、免疫の他、細胞の働きを助けたりと身体に必要な働きもあります。
本来であれば、身体の中で活性酸素と抗酸化力が共同して、うまく機能するようになっているのだと思います。

しかし、最近では活性酸素は悪い方面でばかり取り上げられています。
その代表格は、「老化」であり、「がん化(発がん)」「慢性炎症」などの生活習慣病要因でしょう。ストレスでも産生されます。
また、ベトナム戦争で使われたという枯葉剤は、体内で活性酸素を作る無限ループ的化学反応を起こす機序があり、胎児のDNAを傷害し奇形を引き起こしたと言われます。

慢性炎症とは、「常にそこで免疫反応がゆるく起きている」という病態で、肥満など生活習慣病やアレルギーの要因と考えられる病態です。
これらの疾患が増えてきた時代背景に、ベトナム戦争時の枯葉剤ほどではないにしろ、化学物質にまみれた生活習慣が普及したこととの関連を考えたくなります。
日常使われている化学物質が、活性酸素を作っているという証拠は見つかっていないと思いますが、少量とはいえ、継続的に複数のものが身体に入り続けることの安全性は確認できていないので、私はできるだけ避けた方がいいと考えています。


もとい、活性酸素が多い生活習慣に変わってきたことだけではなく、抗酸化力が低い生活習慣に変わったことも、事態の悪化を促進する要素と思います。

生きる上で、酸素は吸わないとならないし、今の生活で化学物質を完全に排除などできません。紫外線をあびても活性酸素は産生します。免疫反応がおきれば、健康な細胞も一緒に障害を受けるのです。
活性酸素は生きるためのコストの側面もあり、ゼロにすることはできません。
活性酸素を減らす努力はほどほどにし、抗酸化活性を上げるほうに努力をした方が、効率がよいと思います。

抗酸化物質 + 野菜

抗酸化活性とは、身体の中で抗酸化物質がどれだけ働けるか、ということの指標です。
以前の記事にも書いてますが、身体が利用する抗酸化物質としては、グルタチオン、抗酸化ビタミン(ビタミンC、ビタミンE)、CoQ10、αリポ酸などがあります。

ビタミン類以外は、体内で生成される物質ですが、普通の生活では十分産生されず、普通の食事では十分摂取できない、というのが、現代人の抗酸化力不足を表していると思います。
なので、私は適宜サプリで補うことを、薦めています。

これらの5つの抗酸化物質は、それぞれが連携しながらネットワークを形成しています。
何かが少し足りなくても、いきなり総崩れにはなりませんが、どれか一つだけたくさん摂ってもあまり意味がないことを表します。

また、このネットワークを助ける物質として、フィトケミカルが関わっていることがわかってきています。
フィトケミカルとは、植物の化学物質という意味で、野菜や果物の色素やにおい物質の中から発見され研究がすすめられています。
フラボノイド類やカロチノイド類といえば、聞いたことがあると思います。有名なのは、ポリフェノール、カテキン、カロテンなどです。

フィトケミカルは100種類以上発見されているようですが、まだ数種類しか研究はされていず、全貌はよくわかっていません。
抗酸化物質とネットワークを組んでいることは確かで、フィトケミカル同士もネットワークを組んでいると考えられるので、やはり、少ない種類をたくさん(サプリで)とるよりは、野菜や果物で未知の成分まで含めて、食事でとる方が効果的かつ安全と思います。
野菜は健康にいいというのは、本当だったということです。

糖質制限を推奨する人の中には、「野菜はいらない」という人もいますが、それは抗酸化活性のことを無視した暴論です。また、「野菜は食物繊維しか栄養がない」という考えもまた極端ですし、「野菜には糖質が多いからとらない」というのもリスクとベネフィットをはかり間違えていると思います。
何ごとも、極論に偏らないようにした方がよいです。

抗酸化物質の摂り方

以下、サプリなども含めて書きますが、単体で大量に摂ることはやめて、組みあわせてとるようにしてください。

  • グルタチオン
    システイン、グルタミン酸、グリシンという3種類のアミノ酸から合成される、たんぱく質です。抗酸化物質の中では体内に最も多く存在し、最も重要と考えられます。
    必要に応じて、体内で合成されますが、たんぱく質不足の食生活では、身体の他の部分とアミノ酸を奪い合うことになるので、抗酸化活性が落ちることが考えられます。
    たんぱく質をしっかり摂り、適宜身体の中で合成できる状態になっておくことが重要です。ただし、たんぱく質は一朝一夕で摂れるようにはならないので、必要になった時にあわてないように、普段からの備えが重要です。(具体的なとり方は、項を改めて書きたいと思います。)
    グルタチオンという形のサプリもありますが、値段が高い上に、消化過程でアミノ酸に分解されてしまうので、お薦めしません。
    どうしてもという場合は、システインの前駆体であるNAC(Nアセチルシステイン)は安価で、抗酸化活性の助けになりえます。私は感染症の時は、ビタミンCとNACを追加で飲むとよかったりします。

  • ビタミンC
    もっとも有名な水溶性ビタミンですね。抗酸化活性の他、抗ウイルス作用、コラーゲン産生の促進(美肌)などの効果のあるビタミンです。効果がありすぎるために、困るという勢力からの圧力で医学界では無視されるという陰謀論もあるくらいです。
    水溶性の上、熱に弱いため、食事で摂るなら生野菜か果物がメインとなりますが、生野菜は量を食べるのが難しく、果物は糖質が多すぎるため、お薦めできません。
    安価で安全性も高いので、心配せずサプリで摂っていいと思います(合成と天然で構造効能の違いはありません)。
    厚労省の指針に記載されている量は、”ビタミンC欠乏症=壊血病”にならないギリギリの量なので、現代人が健康維持のために摂るには少なすぎます。
    サプリで1日数g~は摂ってもいいでしょう。
    他の水溶性ビタミンにも言えますが、摂って多すぎる分は尿から排泄されます。なので、摂りだめができません。できるだけこまめに摂る必要があるので、サプリの飲み方にコツがいります。
    そのため私は、徐放剤と言って、消化管でじわじわ溶けて吸収されるタイプの錠剤を飲んでいます。

  • ビタミンE
    代表的な抗酸化ビタミンですが、こちらは脂溶性です。ビタミンCのようにこまめに飲まなくても大丈夫ということです。
    ビタミンEというのは複数の化学物質の総称で、トコフェロール、トコトリエロールなどという名前です。サプリもそのように記載されていたりしますが、天然型と合成型では、構造が少し違い、効能も違うので注意が必要です。
    ビタミンEは脂溶性のため、身体の脂質成分で働きます。血管壁ではプラークの吸着を抑えたり、2種類の女性ホルモンの変換に関わったりします。血液サラサラ、妊活ビタミンと言われたりするのは、このためです。
    サプリでは、天然型のα‐(またはdα‐)トコフェロールを選びます。トコトリエロールはα‐、β‐、γ‐などのミックスの製剤を、トコフェロールの補助に少しで十分です。
    血液サラサラ作用があるので、ドロドロの人がいきなり摂取すると、プラークがはかれて詰まる(心筋梗塞などの血行障害)リスクがあるため、少量ずつはじめて、徐々に増やす必要があります。詳しくはこてつブログなどを参考にしてみてください。

  • セレン
    ビタミンEを助けることで抗酸化活性を表すものに、セレンがあります。
    セレンは土壌内に存在するミネラルです。アメリカでは、土地にセレンの多い地域と少ない地域とで、がんや心臓病の発症率が違うことから注目され、一般的なサプリとなっています。
    セレンの多い食材は魚介類と言われているので、日本ではアメリカ人ほどは欠乏しにくいかもしれませんが、抗酸化力は強力なので、私は少しだけサプリで補うようにしています。(200㎍を2~3日毎)
    ビタミンと違って、大量に摂ると過剰症がでやすいので、量には注意が必要です。

  • CoQ10
    日本人が発見したことで、国内でもアンチエイジングビタミンとして有名ですね。
    効果は抜群ですが、サプリの値段が高いのが難点です。私は、たまに飲む程度です(ケチw)。というのも、これだけ飲めばいいのではなく、ネットワークの一部であることを理解しているからです。
    ゼロではない方がよいですが、サプリとしては、他のたんぱく質やビタミン類の方が優先されるものだと思います。経済的に余裕のある方は、毎日でもどうぞ。

  • α‐リポ酸
    抗酸化ネットワークの中では、かなり重要な位置を占めると言われます。じゃがいもなどに含まれているとされますが、十分量はとりにくいためサプリを薦めます。
    量のきまりははっきりしていないようですが、私は1日300㎎をセレンを飲まない日に飲んでいます。

フィトケミカル

フィトケミカルは野菜から摂ることをお薦めしていますが、サプリもいくつかは売られています。古典的にはβカロテンが有名です。βカロテンはビタミンAの前駆体ですが、健康にいいと喧伝されたため大量に摂取する人が出て、健康被害が出てしまったことで、研究が足踏みしたという残念な歴史があります。
現在サプリとしては、βカロテンの他、イチョウ葉エキス、ピクノジェノール(松の成分)などがあります。上にも書きましたが、ひとつのものを大量に摂ることは、未知の被害が現れるリスクもあり、お薦めできません。
サプリで摂る場合も、他の抗酸化物質はマストとして、フィトケミカルも複数を組みあわせるようにしてください。

食事で摂る場合、フィトケミカルは植物の細胞の中にあるため、調理して細胞を壊すほうが摂取効率が良いようです。また、植物の色素など皮の部分に多く含まれるとされるため、できるだけ皮ごとの調理がよいです。たくさんの種類の野菜を組みあわせることも、大切です。

そこで、私のおすすめは重ね煮です。
(私はこのリンク先の旅館で修業した方から直接教わりましたが、書籍も出ています)

難しいことはなく、野菜を切って無水(少量の水)でゆっくり加熱します。うちでは定期宅配のその時ある野菜で作るのが基本ですが、好きな野菜は買って足したりもします。
注意点は、キャベツ以外の青菜は合わないことと、ニンニクやネギ、トマトなど香の独特な野菜は、その後の使い道に幅がなくなるので、使わないことです。
我が家の定番は、一番下きのこ、次にありあわせ果菜、キャベツ、玉ねぎ、ありあわせ根菜です。

これらをまとめて作り、冷蔵庫保管、または小分けにして冷凍しておくと、「あ、みそ汁作ろう」と思ったら、鍋に入れて水足して、沸騰したら味噌投入くらいの手間で作れます。
野菜からだしが出るので、そのままでもおいしいですし、粉だしを足してもいいです。

また、重ね煮はみそ汁以外のものにも使えます。
ツナ缶やコンビーフと混ぜてサラダにしたり、カボチャやトウモロコシ多めで作りミキサーしてポタージュにしたり、ハンバーグの種にしたり、こどもに野菜を食べさせる方法としても、すぐれた料理法だと思います。


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