免疫力を最大限発揮する方法:総論編~免疫その③

免疫のしくみを知った上で、免疫力のあげ方について考えてみますが、ひとつだけ初めに忠告しておきたいことがあります。

極端思考はおススメしません!

「○○さえ食べれば(すれば)免疫力があがる」などという魔法のような方法は存在しません。

医学的な何かの方法は、すべて「少しだけ何かの確率を変える」という効果しかありません。
強力な治療でも、「少し」の部分が少し強力なくらいで(その分副作用のリスクも大きかったりします)、確率でしか変わらないことは同じです。

なので、いろんな方法を組みあわせて「確率を高める」ことが重要で、「○○だけ」という単体の方法では、確率は低い上、その方法を極端に取り入れると予期せぬ副反応に見舞われるリスクもあがります。

これは、免疫力のことでも、病気の治療でも、発達の支援でも同じです。
複数の方法を組みあわせて、「改善可能性を上げていくこと」がゴールになります。

本当に免疫力はあがるのか?

ここまで書いてなんですが、免疫力を超人的に上げることは不可能だと思います。

しかし、ほとんどの人は普段、免疫力を下げる習慣を行っていて、本来持っている力を発揮できない状態にあると言えるので、「現状より上げる」ことや、「将来的に下がり幅を小さくする」ことは可能と思います。

なので、「上げる(下げない)」となるのです。

免疫力を下げない方法

本題にうつります。ポイントを以下の3つにわけてみます。

  • 免疫力を下げる行動をへらし、免疫細胞の働きを助ける【生理機能を良好に保つ】
  • 免疫の副反応を最小限におさえる【抗酸化活性を上げる】
  • 常在微生物をよい状態に保つ【常在微生物のよろこぶ環境づくり】

生理機能を良好に保つ

免疫も生理機能の一部です。免疫単独で機能するわけではなく、自律神経など脳の管理下にありながら、他の生理機能との連携もします。

脳はすべての生理機能を統括している反面、脳機能そのものも生理機能の一部で、全身の細胞たちの連携によりコントロールされている側面もあります。
ちょっとややこしいですが、脳は生理機能のコントロールセンターの役割を担うと同時に、生理機能の一部門でもあるという感じです。

なので、生理機能を良好に保つためには、脳によるコントロールを良好に保つことと、身体全体の生理機能の局所の働きを良好にすることの、両立をめざすことになります。
一般的によく言われる、睡眠、生体リズム(睡眠‐覚醒、食事時間など)、栄養、ストレスコントロールなどが重要となります。

抗酸化活性を上げる

免疫の副反応とは、活性酸素による毒性が一番かもしれません。活性酸素は強力な武器ですが、敵だけを狙い撃ちができないため、味方(健康な細胞)にもダメージを与えます。

しかし身体には、活性酸素を無毒化するシステムが備わっています。それが抗酸化力です。
身体が利用する抗酸化物質としては、グルタチオン、抗酸化ビタミン(ビタミンC、ビタミンE)、CoQ10、αリポ酸などがあります。
それぞれ食事からも摂取できますが、十分量をとるのは難しく、適宜サプリを使う方がうまくいきます。

これらの5つの抗酸化物質は、それぞれが連携しながらネットワークを形成しています。何かが少し足りなくても、いきなり総崩れにはなりませんが、どれか一つだけたくさん摂ってもあまり意味がないことを表します。

また、このネットワークを助ける物質として、フィトケミカルが関わっていることがわかってきています。
フィトケミカルとは、植物の化学物質という意味で、野菜や果物の色素やにおい物質の中から発見され研究がすすめられています。
フラボノイド類やカロチノイド類といえば、聞いたことがあると思います。

フィトケミカルは100種類以上発見されているようですが、まだ数種類しか研究はされていず、全貌はよくわかっていませんが、ネットワークを組んでいることは確かなので、少ない種類をたくさん(サプリで)とるよりは、野菜や果物で未知の成分まで含めて食事でとる方が効果的かつ安全と言えます。
フィトケミカルは植物の細胞の中にあるため、調理して細胞を壊すほうが摂取効率が良いようです。一番のお薦めは、煮込んで汁ごと食べること、日本人だとみそ汁が簡単です。

常在微生物・常在細菌

常在菌については、最近は書籍などもたくさん出ているので、興味のある方は調べてみてください。

ポイントとしては、微生物たちが暮らしやすい生活環境をつくり、微生物たちを殺さないように気をつけることです。ただし、微生物組成は生直後の生活でほぼ決定しているので、他人にとってよいことが、自分にもよいとは限りません。菌活は個人差が大きいのが注意点です。

一般的には、腸内細菌にとってよい環境とは、食事の食物繊維が多い(特に水溶性繊維が重要)こと、発酵食品などを多く摂りよい菌を助けることです。

前項に書きましたが、食事で有益菌をとっても、腸内細菌の組成は変えられません。胃酸により菌が死んでしまう可能性もあります。
それでも、発酵食品を摂った方がよいのは、街のたとえでいえば、市民にはなりませんが善良な旅行者として街の雰囲気づくりに役立つことです。胃酸で死んでしまっても、よい菌はよい菌のえさになると言われます。

また、腸以外の常在菌も含めて、抗生剤、消毒薬などはよくありません。
街のならずものを殺そうとして、善良な市民も巻き添えに爆撃するようなものです。ならずものが一定以上多くなった場合は仕方がないのですが…。
菌を殺す処置は少なければ少ないほど良いですが、生まれて一度も抗生剤を飲んだことのない日本人は希少なので、みなさんそれなりにはハンディがある状態と言えます。

以上をふまえて、各論にうつります。

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