野菜の効用①:食物繊維と腸内細菌

セルフメンテナンス

今まで、栄養関連の記事で“たんぱく質(特に動物性)”を推してきました。
理由は、たんぱく質が身体の「構造と機能」の主成分だからです。たんぱく質なしに人の身体は、形を保つことも臓器を働かせることもできないのです。

たんぱく質が不足しない身体を作ることは、病気を治すことの他、健康に暮らすこと、能力を発揮すること、アンチエイジングや美容についても、もっとも優先度の高いことと理解してほしいと思います。

そして、脂質の重要性も既出しました。

では、他の栄養素は必要ないのでしょうか?
そんなことはない!ということについて、理由を考察してみたいと思います。

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身体に必要な栄養素は?

身体組成からみる必要栄養素

身体を構成する成分(成人)
  • 水分   :約60%
  • たんぱく質:約20%弱
  • 脂質   :約15%~ 
  • ミネラル :約5%
  • 糖質   :1%未満

赤ん坊は水分が多く、老人になると水分が減っていき、また、女性は男性より体脂肪が多めなので、年齢、性別によって多少の違いはありますが、上の順番が変わることはありません。

水分以外で一番多いのは“たんぱく質”身体構造と機能の維持にたんぱく質が必要ということがイメージしやすいですね。

次に多いのは意外かもしれませんが“脂質”です。
脂質は脳の構成成分としてはたんぱく質より圧倒的に多く(つまり脳は脂質でできている)、また細胞の脳とも呼ばれる細胞膜の構成成分でもあります。長年「悪玉」の汚名を着せられていて、摂取を減らす運動の対象になり、逆に健康被害の原因になった経緯については書いたとおりです。

次の”ミネラル”とは、化学的には「有機物でないもの=無機物」と定義されていて、身体の構成成分としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅などの成分として知られているものです。
ちなみに“有機物”とは、炭素、酸素、窒素、水素をもとに作られている物質です。体で働く、たんぱく質(組織、酵素など)、脂質、糖質、ビタミンなどです。

最後は“糖質”、身体ではブドウ糖が重要な役割を果たしていますが、全体の1%未満しか存在していないことに留意してください。
(糖質についての考え方は、また別記事にしたいと思います)

これら身体組成から直感的に考えても、新陳代謝に必要なのは「たんぱく質(ビタミン)、脂質、ミネラル」と理解できます。

野菜の栄養素は何質になるの?

野菜はものにもよりますが、少しのたんぱく質、糖質、ビタミン、ミネラル、それと、食物繊維が豊富に含まれている、というのが従来の栄養学的考え方です。

“従来の”とことわりを入れているのは、最近の研究で「野菜の良さと悪さ」について新しい知見が積みあがってきているからです。

一番の変更点は、食物繊維の役割・重要性、フィトケミカルの役割、ビタミン・ミネラルの含有量の変化です。
以前の記事(各論編;抗酸化活性を上げる~免疫その⑤各論編;常在微生物のよろこぶ環境づくり~免疫その⑥‐2)でも少し触れていますが、あらためて詳しく見ていきましょう。

野菜の重要性:食物繊維編

食物繊維はカスではありません

食物繊維は従来、消化吸収されないため、「ゼロカロリー」で便のかさまし程度の役割しかないと考えられてきました。
でもそれは違います。
(そもそも“カロリーという概念”がオワコンだと思うのですが、それに代わる理論が確立していないので、便宜上使われています)

食物繊維は「人の」消化酵素では分解できませんが、腸内細菌たちの酵素では分解できます。この分解産物は、腸内細菌の餌にもなり、人の吸収できる栄養素にもなります。
つまりゼロカロリーではなく、腸内細菌の分解したものを人は栄養として吸収・利用しているのです。これは、腸内細菌と人の共生関係といえます

腸内細菌について

腸内細菌叢は常在細菌叢の中では最大のボリュームのもので、1000種類以上100兆個くらい存在すると言われます。消化のほか、免疫、情緒や自律神経系の調節等にも関わっています。
人の細胞(60兆個)より数が多く、身体全体の機能に大きく影響します。菌の多様性は大きいほど健康度が高いとされます。

胎児の腸内にはいませんが、分娩直後から増え始めます。
母親の産道の他、皮膚表面、母乳内の常在菌が、乳児の腸内で働き、生着すると考えられています。
なので、帝王切開よりは経膣分娩の方が、腸内細菌を引き継ぐという意味では有利ですが、母乳栄養をすることでその不利を相殺できる、とも言われます。

その後、離乳食以降に食べるものに合わせた細菌叢になっていくので、食物繊維の多い食事の方が、菌の多様性が大きく健康度が高くなります

なので、乳児期~離乳期~幼児期と、「母親から引き継いだもの」と「何を食べて暮らす文化か」の両方の影響をうけて、腸内細菌叢として定着すると言えます。
これは、生活習慣病などで、親子で体質が似かようことは、遺伝的な類似のほかに、常在細菌荘(腸内細菌叢)が似かようことの影響もある、ということです。


一度定着した腸内細菌叢は、大人になってから食生活を変えても、基本的には変わらないようです。
ベジタリアンやイヌイットの食事などを、違う文化で育った人が大人になってから始めても、その食事に適応した腸内細菌叢とはならず、必要な栄養素を得ることが難しく体調を壊しやすくなる、ということです。

移民の研究では、家庭内での普段の日の食習慣は世代を経ても変わりにくいことが知られます。子供のころ食べて育ったものを、大人になっても無意識に踏襲するということです。
これは、親世代と似かよった腸内細菌叢をもつ子ども世代にとって、合理的であると言えそうです。

なので、腸内細菌叢の観点からみると、大人になって極端な食生活(ベジタリアン/ビーガン、肉のみ、お菓子のみ)などを行うのは、ある程度は本人の裁量の範囲ではありますが、生まれ育った食事と大きく違う場合は持続が難しい場合が多いです。子どもの頃食べてきた栄養の蓄積を消費しているだけという自覚をもってほしいです。(私は極端な食生活をおすすめしません)

蓄積した栄養が枯渇するまでには個人差がありますが、数年~数十年くらいでガタが出てくるようです。どんな体調不良を来すかも、個人差の範囲なのでなかなか一般化できません。
自分で体調や栄養の不足感についてモニタリングし、体調が悪い場合は極端な食事に固執しないことをお薦めします

また、子どもに同じような極端な食事をとらせているケースにたまに出会いますが、やめた方がいいです。
大人にとって栄養を使い果たす数年~数十年はいい勉強かもしれませんが、栄養をたくさん必要としている子どもにとっては一瞬一秒でも無駄にはできません
子どもに食べさせるものは、大人以上に考えてほしいと、個人的には思います

腸内細菌と食物繊維

腸内細菌がどのような種類の食物繊維を分解するかは、菌それぞれなので、多様な腸内細菌を維持したければ多様な食物繊維をとることが合理的です。

食物繊維には、「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」という分類があり、人の腸内での役割は違います。

「不溶性食物繊維」はいわゆる植物の筋っぽい成分などで、人の腸内細菌は少ししか分解できません。
なので、便のかさましや腸を刺激し蠕動を促す効果があると言われます。

「水溶性食物繊維」は植物などのぬるぬる成分等として知られます。腸内細菌たちが好んで分解するのはこちらの繊維です。
食物繊維を分解・利用する菌は一般的に「善玉菌」と呼ばれるとおり、水溶性食物繊維には整腸作用があります。ぬるぬる成分は水分を吸収するので、便の柔らかさを保ちます。
また、分解産物の「短鎖脂肪酸」は人の腸が吸収できる栄養素で、「やせやすくなる脂肪酸」と考えられ研究されています。


善玉菌が増えるということは悪玉菌がのさばれなくなることを意味します。日和見菌たちも悪に染まりにくく、善い市民となるため、相乗効果が得られます。
悪玉菌は「炎症」という状態とかかわりが深く、炎症性疾患、生活習慣病などの経過に影響します。一般的に、食物繊維よりたんぱく質や糖質を好みます。

腸の状態、ひいては全身の状態を善くしておくために、善玉菌のよろこぶ食物繊維をとり、悪玉菌のよろこぶ、たんぱく質は減らせないので糖質を減らすという食事が、理にかなっていると言えます。

余談

「青汁一杯の鍼灸師」森美智代さんの腸内細菌には、草食動物の反芻胃の中にいる「食物繊維をアミノ酸に変換できる菌」が見つかったと報告されています。つまり、野菜からたんぱく質を作ることのできる菌がいたのですが、この菌は通常では人の腸内には見つからないものだそうです。
森さんは著書によると、難病を克服する目的で長期の断食療法を複数回おこなった過去のある方で、おそらくこの断食→復食の流れの中で、その菌が腸内に定着したものと思われます。
一般人がまねできる経歴ではないので、あらためて「食事のたんぱく質は必要です」とお伝えします。

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食物繊維の摂り方

摂り方といって特別なものがあるわけではありませんが、菌に多様性をもたせるためには、色んな種類のものを取り入れるのがいいだろう、と言えます。
また、生まれ育った食事に近いものが生着している菌によろこばれる、とも言えます。

日本人であれば、各種野菜の他、豆、海草、きのこ、その他雑穀類(話題のもち麦などにも多く含まれます)など、多種のものを日常的に取り入れたいところです


食物繊維は便秘に聞くイメージがありますが、上にも書いたとおり、不溶性食物繊維は消化されにくく、便中にとどまります。
これは、便秘の人の中には、不溶性食物繊維でかえって便が固まり出にくくなる場合がある、ということです。
水溶性食物繊維では便は水分を保ちますので、特に便秘がちの人は、水溶性食物繊維の豊富な食品を日常的に摂ってみてください


「そうはいっても、そうそう毎日野菜食べられないし…」という場合には、食物繊維のサプリを使うことも考えてもいいでしょう。

サプリには、“飲料等の状態になっているもの”や“粉末のもの”があります。

飲料等になっているものはお手軽に摂取できますが、ほとんどの製品には甘味がついています。甘味は悪玉菌の餌です。せっかく善玉菌をよろこばせようとして悪玉菌をよろこばせては効果半減です。

サプリでとるなら、“甘くないもの”を探しましょう。

粉末のものの多くは、食物繊維の成分そのものの名前で売られています。
メジャーなところでは「イヌリン(菊芋)」「難消化性デキストリン」「サイリウム(オオバコ)」「グアーガム(グアー豆)」などがあり、水溶性食物繊維です。
「ファイバー」という商品名の場合は、成分表示をみるとこれらの成分が使われていると思います。
(ちなみに、「セルロース」は不溶性食物繊維です。お間違えなく)

これらの粉末は飲み物に溶かして簡単に飲むことができます。加熱して変性することもないので、温かいものにいれても大丈夫です

ただし、飲み方には注意点があります。

自分の腸内細菌叢にどの繊維が合うかは、飲んでみるまで分かりません。他人に良いものが自分によいとは限らないことは知っておきましょう。

現在の腸の状態によっては、腸内細菌たちが混乱をきたし、便秘、下痢、おならの増加などを来すことがあります
過渡期の症状として気合で耐えるのも手ですが、多くの人にとっては、消化器の症状は社会生活上ありがたくないものでしょう。
これを防ぐには、少量ずつ胃腸の調子を見ながら取り入れること、焦らないようにしましょう。

参考:腸内細菌についてもっと知りたい方は

腸内細菌の入門書的:わかりやすいです

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もっと詳しく知りたいかた向け

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これらは一例ですが、他にも面白い本はたくさんあると思います。

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