“肉食系”を自認している健康な方以外のすべての人、特に慢性疾患にり患してる方、多くの女性、こども、老人、炭水化物依存な男性などは、意識的にたんぱく質摂取を増やすことをお勧めします。
たんぱく質摂取は、1回きりではなく“生活習慣”として、継続することに意義があります。
今稿では、特に不足しやすい“女性とこども”に向けて、たんぱく質摂取を継続するポイントをまとめてみます。
たんぱく質摂取のむずかしさ
ダイエットなどでほとんどの人は経験済みだと思いますが、食事の習慣を変えるのは結構たいへんです。
一時だけなら根性で何とかなるかもわかりませんが、年単位での継続は根性論ではどうにもなりません。
たんぱく質量を増やすことは、高齢になるほど重要になるため、一生かけて続けることが目標になります。できるだけストレスなく、できれば楽しんでやれる習慣にしたいですね。
なので、脳や生理機能の特徴をつかみ、根性や努力を使わない方法が求められます。
たんぱく質代謝がおちてるかも?:節約モード
前稿にも書きましたが、たんぱく質不足が続くと、たんぱく質の消化吸収機能がおちます。
このことが、たんぱく質をとると「もたれる」「身体が重い」「お腹をこわす」といった訴えにつながります。
こどもの頃からお腹が弱いので「そういう体質だ」と信じている人もいるようですが、人の身体は、形を保つこと(構造)も動いたり働いたりすること(機能)もたんぱく質なしでは行えないようにできています。
たんぱく質を食べてなくても、きちんと動けているように思えるのは、胎児~乳児・小児の時にたんぱく質を身体にたくわえているから、その再利用で何とか賄うことができているだけといえます。
そして再利用分を“代謝がおちる”という状態で、節約して生きていることになります。
実際、その“たんぱく質代謝をおとしての節約”という身体の適応が、さまざまな症状や状態を作り出しているようです。
(いずれ記事にします;節約しながら生きていられるならいいじゃない、という考え方もあります。が、それは身体がまだ若くて、少ないたんぱく質のやりくりで何とかなっている間だけ、という条件つきです。若くなくなったり大きなストレスにさらされたりすると、様々な外の刺激にうまく身体が反応できなくなってくる、適応力が発揮できなくなるといえます)
どこかしら「調子が悪い」ところのある人は、“節約モード”になっている可能性が高いと思います。
代謝がおちて節約モードの身体になっている時、たんぱく質摂取を増やしても、初めはうまく消化できません。体調不良をきたす場合もあります。
たんぱく質摂取を増やすと必ず代謝はよくなってきますが、一進一退(にみえる)だったり、時間がかかったりします。
なので、ここにコツがいるということになります。
たんぱく質をとると便通が…:腸内細菌の低たんぱくモード
「便通が悪くなる(便秘・下痢)」もわりとよくある訴えです。
身体の適応と同じくらい、腸内細菌も“普段食べているもの”に適応しています。
なので、食べるものの質や量を変えると、あたふたします。それが、便通、腹痛、おならなどの症状になって現れてきます。
これらは場合によっては、体調不良よりも日常生活に影響が大きかったりするので、腸内細菌にも配慮しながら、食事内容を変更したほうがいいことになります。
食物繊維や発酵食品をうまく足していくことが、便通の改善の解決策になりますが、これも個人差が大きく、他人にとっての最適解が自分にも当てはまるわけではないことを知って、自分にとっての最適解を探す少し長い道のりを覚悟した方がよいでしょう。
(参考までに♪腸内細菌について ↓ )
糖質制限しないとだめ?
以前ちらっと書きましたが、私は糖質制限から入りたんぱく質盛りへ移行しましたが、糖質制限とたんぱく質摂取は別の理論です。
なので、たんぱく質盛りに糖質制限は必須ではありません。
特に女性とこどもは、糖質はある程度はあった方がうまくいくので、巷で言われているような厳しい糖質制限はむしろお薦めしません。
しかし、糖質でお腹がいっぱい(満足感がある)になってしまっては、十分な量のたんぱく質を食べることができません。
たんぱく質には別腹がなく、満腹になりやすい食品です。
これは、こどもにたんぱく質を食べさせる時には、重要なポイントになります。
食事量が多くないこどもでは、特にたんぱく質は優先的に食べさせないと、結局量が入らないという事態になりがちです。
糖質は「ゼロ」をめざす必要はないけど、うまく摂る(減らす)必要があると、考えています。
もちろん、糖質制限によってえられる(とされる)「脂肪を燃焼しやすくなる」「組織の糖化(老化の一種)をふせぐ」などの恩恵も、うまく手に入れたいですね。
たんぱく質盛りの実践編
継続することが目標なので、“おいしい”“辛くない”“満足感がある”が大切です。
「身体にいいことしている」つもりで、気軽に取り組んでみましょう。
特に女性・お母さん向け
女性の場合、ゆっくり進める(焦らない)ことがうまくいく秘訣と思います。
いきなり糖質をカットすると体調を崩すケースが多いので、たんぱく質を増やすことが優先、お腹がいっぱいになったら糖質を減らす、という順番は守ってください。
多くの男性の場合は、あまり考えずに「おかず増量、主食カット」で失敗は少ないです。プロテイン飲料も難なく飲める方が多いです。
単身生活男性でまれにいる「コンビニのおにぎりとパスタで生きてる」という人や、菜食やマクロビにはまっていた人などは、女性同様にゆっくり進めてみてください。
常に、自分の体調、胃腸の具合と相談しながらやってみましょう。
- 動物性だけでもいいので、食べてるたんぱく質量を計算してみよう(→参考)
- 一日で体重あたり1.5g以上とれてるようなら、そのままでOK
(もし体調不良があるなら、他の要因か身体の適応待ち) - 足りなかった、という人は下のステップへ
「まあまあ」と「全然」の違いは体感によるので、自分の感覚で決めてOK
まあまあたんぱく質摂取できる人
- 動物性たんぱく質のおかずを1品ふやす
最初は一食、慣れてきたら毎食
満腹感があるなら、炭水化物を少し~減らす - 消化力・お腹の具合(腸内細菌の具合)と相談しながら、体重あたり1.2~1.5gをめざす
- 食事でここまで増やせない場合は、プロテイン飲料を導入も可
- たんぱく質の増やし方は、「月単位」くらいゆっくり
全然たんぱく質がとれてなかった人
- 植物性、または魚でも、消化できそうなたんぱく質のおかずをみつけ、毎日少しでも食べる
- 1日3食にこだわらず、何度も食べる(おやつを糖質からたんぱく質にかえることをおすすめ)
- プロテイン飲料をうす~く作り、1日かけて飲む
量は、消化力・お腹の具合(腸内細菌の具合)と相談しながら - 主食は食事毎にまんべんなく食べる
炭水化物の過食にならないように気をつける - たんぱく質の増やし方は、「月単位」~「年単位」くらいゆっくり
注意点:たんぱく質の増やし方と糖質の減らし方
たんぱく質を増やすときの注意点
- 先に主食を食べると入らなくなることがあるので、主食は最後に
- どんぶり物や麺類などの一品料理はたんぱく質を増やしにくく糖質が多いので、おすすめしない
(外食では“定食系”がおすすめ、ご飯の減量は気兼ねなく頼める。和食系は塩味が濃いけど、洋食系はご飯・パンなしでも食べやすい味付けが多い) - 外食などでおかずが増やせない時は、プロテイン飲料で代用可
- どうしてもお腹がいっぱいで全く食欲がない場合(たんぱく質を増やすとたまにある)は、「お腹がすく」感じがでるまで食事お休み:プチ断食(水と塩は可)
プチ断食再開後は、たんぱく質量は今までより少し控えめがベター - 消化不良・体調不良の時は、増やしすぎを疑い、たんぱく質量を少し減らす
(プロテイン飲料では簡単に飲めてしまうため、過量になりやすい)
- 慢性疾患が悪化する(ように見える)ケースでは、体調が悪い場合は上の対応、体調はいい場合はできるだけ継続する
(免疫細胞の反応は他の組織より早いため、アレルギーなどの症状はひどくなりやすい。体調がよい場合はたんぱく質量は保ち、適宜軟膏などで苦痛をおさえてみて)
- 旅行や会食などは、(たんぱく質量のことは忘れて)しっかり楽しむ
- 食事の楽しさを優先して、食べたくない日は無理をせず、月単位年単位でトータルで増やせていけばOKと考える
糖質の減らし方
- たんぱく質が増やせてきて「お腹がいっぱい」な感じになってから、減らす
- 最終的には、一日一食ご飯半膳くらいへ
(少ない量で慣れてきたら、主食を食べない日と食べる日が時々でも可)
- まず最初に減らす(やめる)のは:ジュース(100%果汁も!)
- 次に減らす(やめる)のは:お菓子
特に、たいしておいしくないお菓子を惰性で食べない!
食べるなら、おいしくて満足感の高いものを「食事のあと(デザート)」に、別腹で入る量を。デザートのためにおかずを減らすのは本末転倒!
- 炭水化物メインな野菜(いもなど根菜類)は一種類を大量に食べないように気をつければ、おかずの材料にするのはOK
- おかずの味付けに“お砂糖”が多すぎないか気をつける
慣れてくると少しの味醂くらいの甘味でも十分おいしい。主食を減らせてくると、おかずの味付けは薄くてよくなる。 - 主食を減らしにくい一品料理はさける(たまに、にする)
- お菓子類を十分減らせてから、主食を減らし始める
(但し、たんぱく質がしっかり消化できて食事の満足感が得られてから)
こども向け
乳児、幼児、学童で少しづつ違います。
いわずもがな、こどもの成長発達にはたんぱく質をはじめとする“栄養”はとても大事です。
すべてはできないかもしれないけど、できる範囲で取り組んでみてください。
こどものたんぱく質摂取の考え方
- 離乳初期からたんぱく質(動物性・植物性とも)を食べさせる(アレルギーの予防にもなります)
- お米やパン、うどんの味、お砂糖の味はできるだけ覚えさせない
どの世代でも、ジュース(100%果汁も!)はやめる - 牛乳はたんぱく質量が少ないので、牛乳よりはミルク(育児用・フォローアップどちらでも)がよい。(飲むのも、料理も)
- 食卓には先におかずだけ並べ、まずおかずでお腹いっぱいをめざす
先に主食を見せると、主食を食べてしまいお腹いっぱいになってしまうケースが多い - “おやつ”ではなく“補食”:積極的にたんぱく質をあげる
ゆで卵、から揚げ、ナゲット、チーズなど。甘くなくても、子どもの好きな物ならば文句はでにくい - “甘いもの”は特別な日(クリスマス、誕生日など)、またはきちんと食事ができた後(デザート)に限るのがベター
- 弁当はおかず多め、主食少な目で。
- 給食はみんなと同じものを食べさせる
(給食の主食量は多くたんぱく質量は少ないので、給食世代では朝夕の食事は主食なしでも可) - 成長期にはたんぱく質需要が増すので、プロテイン飲料を足すのがおすすめ(朝食時や間食に)
- 運動部でも、たんぱく質多く、糖質少なくは同じで大丈夫
- 思春期になると、親のコントロールをはずれ勝手にお菓子など食べまくったりするのは想定内で、思春期前までに「たんぱく質を食べるのが当たり前な食習慣」を身につけることが目標
こどもの食事番外編:野菜・好き嫌い・鉄分
本来、人(こども)にとって食事は楽しい時間です。
親子の不要なバトルで楽しい体験が台無しにならないように、頑張らないでいいところは頑張らないようにしてほしいです。
野菜・好き嫌い
- 離乳食は“たんぱく質と野菜”で。(主食や甘いものの味を覚えさせると他の物を食べなくなるリスクがある、炭水化物は野菜から摂れる)
- 幼児以降は、野菜は“努力目標”
食べられる野菜を好きな味付けで少し食べられればOKと考える。無理強いして、食事が楽しくない時間になってしまうと、たんぱく質の摂取量も減ってしまう - 野菜は抗酸化活性を助ける作用があり、「大人にとっては」必須栄養素なので、こどものうちは「野菜を食べる(ことは良いことという)価値観」を教えることが重要で、無理強いして「野菜嫌い」にしてしまうと、将来損になる。
大人がおいしそうに野菜を食べるところを見せることが重要 - 好き嫌いは年齢的に改善することが多い
特に、給食では友達のまねをして食べる傾向があるので、給食で克服する子は多い。嫌いなものを家で頑張らせなくてOK。 - 嫌いなものを家で頑張ることより頑張ってほしいのは、特に初めてこどもに食べさせる食材は、質のよいものをちゃんとした料理で食べさせた方がよいこと
古くなった、添加物などの味を「嫌い」と覚えてしまうと、一生嫌いなままになる可能性が高い。
鉄分(完母の人は特に重要)
- 鉄分不足は貧血の他、発達の遅れやエネルギー不足の原因になりうる(完母の場合は生後6か月で貯蓄鉄分は底をつく:参考WHO資料)
- 離乳期から積極的に鉄分をとる(赤身肉やレバーがおすすめ)
- または、ミルク(育児用/フォローアップどちらでも鉄分が添加している)を利用する
- 男児と月経前の女児では、赤身肉や鰹など動物性たんぱく質の赤いものをそれなりの量とっていれば、鉄分は不足しないけど、偏食が激しい、たんぱく質が少ない、鶏肉やプロテインがメインの場合などは鉄分補給を考慮する(サプリなど)方がよい
- 月経の始まった女児では、鉄分不足は必至。
月経で失われるたんぱく質と鉄分をしっかり補充することが大事。プロテイン飲料と鉄サプリなど、貧血の診断を待たずに飲みましょう。
たんぱく質はすべての栄養素の基本の中の基本です。
たんぱく質不足では、他の栄養素、サプリや薬剤も効果が半減する、くらいに重要だと思っていていいレベルです。
今日から、たんぱく質盛りを始めてみてください。
その他の栄養素:脂質、糖質、プロテイン飲料、野菜(抗酸化物質)などは、また別記事にまとめたいと思います。
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