各論編:生理機能を良好にたもつ方法~免疫その④

脳を中心にした生理機能のコントロールについて

脳機能の一部に自律機能と呼ばれるものがあります。ホメオスターシスとも言います。
ホメオスターシスとは身体の状態を一定に保つ機能といえ、例えば体温などを一定範囲に保つ機能です。
自律神経系(交感神経系と副交感神経系)や内分泌系(ホルモン分泌)などを介して、全身の生理機能も脳の自律機能の影響下にあります。

つまり、脳の自律機能が乱れると、全身に影響がおよぶということです。
が、とても大切な機能なので、簡単には壊れません。
壊れないけれども、乱れるだけで、下々の生理機能たちはぼろぼろになっていきます。

例えば、自律神経失調症という(あいまいな)病名のつく病態や、ホルモン調節の乱れなどは、全身のあちこちに不調がでますが、身体(局所)に治療を施してもあまりうまくいきません。反面、生活リズム(睡眠や食事、入浴など)を整えるとか、休息をとるとか、脳機能に対するアプローチが効いたりします。

なので、免疫機能についても、一見関係なさそうですが、脳の状態がよいことが大事になってきます。

自律機能を整えるには

自律機能は、脳の機能の中でも中枢部に近いものなので、外の刺激にさらせれないように守られており、治療や何かでも簡単に変化させることはできません。
見えている自律機能は、私たちの生活環境(習慣)にあわせて、脳が調節をしている結果(適応)なので、脳がそのように適応した習慣の方を変えていく必要があります。

脳の自律機能に影響を及ぼしそうな要素として、考えられるものをあげてみます。

  • 生活のリズム(睡眠‐覚醒、食事時間など)
  • 十分な休息・質の良い睡眠
  • 過剰なストレス・心理的負荷
  • 十分な栄養

生活リズム(生体リズム)

生活リズム(生体リズム)は本来脳が中枢でコントロールしているものですが、現代人の私たちは脳からくる生理的欲求の通りには、生活できていなかったりするため、生体の欲求と生活の間にずれが生じがちです。
眠いのに夜更かし、昼夜逆転、満腹なのに食べるなどなど…

脳はその生活スタイルに一生懸命あわせようとするため、自律機能に影響された身体のそこここが悲鳴を上げることにつながります。
また、脳のリズムを無視して生活するうちに、身体の生理的欲求がまったく感じられなくなっている人も珍しくありません。

まずは、生体にはリズムがあるということを自覚して、できる限り自分の生活をそのリズムに合わせるように考えることです。
本来は”感じる”のが理想ですが、感じられない人も多いので、頭で考えて取りくんで、”変化を意識する”方がやりやすいかもしれません。
完全に脳のリズム通りは難しい(多くの人は日の出とともに起きられませんね)ので、できるところからやってみると、少しずつ整ってきます。

  • 生活時間帯をできるだけ一定にする(規則正しい生活)
  • できるだけ、寝る時間・起きる時間は一定にする
  • 週末の寝だめは一日程度なら大丈夫です。連続して朝寝坊したりしていると、だんだん生体リズムがくるってくるので注意。
  • 起きたら周りを明るくする。できれば午前中の日の光を浴びる
  • 食事量・タイミングも一定にする
  • 食欲に応じた量の調節は可、食べたくないのに食べ過ぎないように。
  • 身体のリズムに気づけるようになる
  • 瞑想のような方法で身体に意識をむけることや、長い休みがあるなら、思いきって寝たいときに寝て食べたいときに食べるなどの方法で、感覚が復活する可能性もあります。
  • 食欲に関しては、目が食べたいのかお腹がすいているのかを自分に問うことを、習慣にしてもいいかも。

十分な休養・質の良い睡眠

脳は睡眠中に眠っているわけではなく、覚醒中の出来事の整理をしていると考えられています。
PCでいう、自動メンテナンスをしているイメージです。PCをずっとシャットダウンしないでいると、だんだんパフォーマンスが落ちるのと同じように、睡眠は脳の機能維持に重要です。

上の生体リズムの睡眠の項とかぶりますが、質の良い睡眠に大切なのは、布団(だけ)ではなく、”光と神経のコントロール”です。

脳は、明るさを感じると「朝」と認識し、その十数時間後に眠くなるというリズムをもっています。
よく知られていると思いますが、人の生体リズムはデフォルトでは25時間程度です。朝日を浴びることでリセットし24時間の地球環境に適応しています。朝の明るさがないと、眠くなる時間は1時間遅れてしまいます。
なので、夜眠くなるためには、朝は明るくすることが大事となります。
同時に、夜を明るくしてしまうと、脳は朝かと勘違いし生体リズムのくずれにつながるので、夜は暗めを心がけることが必要です。寝る数時間前から、間接照明や豆電球などをうまく使い明るさを調節するといいと思います。
また、テレビ、PC、スマホ画面も、明るすぎる光源です。使わない、または照度を下げるように配慮してみましょう。
ブルーライトのカットもある程度効果がありそうですし、照明そのものも白色光よりオレンジ光の方が、脳が夜と認識しやすいとされています。

(自律)神経のコントロールとしては、寝る前に興奮しすぎないことが大事です。仕事などでやむない場合もありますが、ゲームなど趣味のことで交感神経を盛り上げないほうがよいでしょう。
また、寝る前に入浴し身体を温めると、温まった体温が下がってくる時に、副交感神経が活発になる(=眠くなりやすい)ともいわれます。

睡眠に最適な環境については、暗め(真っ暗)な部屋、以外は個人差があるように思います。無音が好きな人も、雑音・生活音があった方が良い人も、温度、湿度も人によるし家庭環境によります。
ひとつだけのマニュアルにこだわることなく、自分にとっての快適を探してみるのが良いと思います。

眠剤(睡眠薬)は、どうしても必要な人は使ってください。
ただ、睡眠薬は神経系を抑制するのですが、抑制のための神経も抑制するため、脳機能の部分によっては賦活されることがあり、結果として睡眠の質の低下が危惧されます。必要最低限の量が理想です。この項でお薦めするほかの方法も同時に取り入れると、薬が減らしやすいかもしれません。
アルコールも同様で、睡眠薬よりもむしろ興奮しやすく、睡眠の質を下げます。寝るためにアルコールを飲むことはお薦めできません。

睡眠には、脳内で作用するホルモン(メラトニンやセロトニン)が関わっています。そのホルモンの産生力が落ちることでも、よい眠りが得られにくくなります。
ホルモンには材料と、生成反応に使われる酵素、ビタミン、ミネラルが必要です。メラトニンやセロトニン産生に必要で、現代人の食生活で足りなくなりがちな栄養素をサプリでとることで、睡眠をとりやすくなります。
眠りにくいなという人は、まず栄養(サプリ)を試してみるとよいと思います。

睡眠に必要なホルモンの材料は、たんぱく質(トリプトファンというアミノ酸)です。あとは、ビタミンB3(ナイアシン)、マグネシウムあたりが不足しがちです。
たんぱく質は食事をお薦めしますが(後述します)、ナイアシン、マグネシウムは食事では摂りきれないのでサプリがいいと思います。(ちなみに、マグネシウムは海草に多く含まれます)
マグネシウムサプリは種類があり、下剤に使うもの(酸化マグネシウム)は吸収率が低く効果がでません。下剤以外のマグネシウムや皮膚に塗るタイプや入浴剤タイプのものがおすすめです。
ナイアシンの単独での取り方は難しいですが、ビタミンB群に入っているくらいの量なら問題ありません。ナイアシンだけを足してみたい方は、こてつ院長ブログなどを参考に勉強してから使用することをお薦めします。

  • 寝る前の部屋は暗く、起きたら明るくする(夜はオレンジ光、朝は日光がベター)
  • 寝る前のモニター画面の照度は下げる
  • 寝る前に興奮しすぎないようにする(ゲームに注意)
  • 寝る前の入浴は有効
  • 自分にあう睡眠環境をさがす(マニュアルにこだわらない)
  • 睡眠薬は必要最低限に
  • アルコールは睡眠薬がわりにはなりません
  • 睡眠に必要な栄養をとる
  • たんぱく質、ビタミンB3(ナイアシン)、マグネシウム

過剰なストレス・心理的負荷

生体にはホメオスターシスという体内環境を一定に保つ機能があることは、上に書きましたが、外界の環境は常に一定ではいてくれません。
そのような外界の変化に対応する機能の中で、それが危険かそうではないかを判定し、危険に対してすぐさま対処行動をとる機能は、どの人(動物)にとっても生きのびるために必須の能力です。
つまり、危機対応は、他の生理機能よりも優先されやすいということです。

その”危機対応は優先されやすいこと”が、現代人のストレスフルな状態に関係していると考えられています。

今、私たちの生活には(特に日本では)、目の前に生きるか死ぬかの危機はほとんどありません。サバンナで暮らした祖先の時代とは違うのです。
しかし、危機対応は生体の最優先事項なので、危機察知回路は休むことなく些細な危険をも探し回ります。

人口密度の大きい社会で、組織内外のなぞの上下関係や同調圧力で意思を曲げる必要があったり、他人の怒りに触れたり(自分に向けられているかどうかは関係ありません)すると、それはさしせまった命の危険ではないとしても、「危険!危険!」という信号が全身に発せられます。
この危険信号がストレスの正体です。
が、生体には危険が去ったら警戒を解除する機能ももちろん備わっています。何が問題かというと、現代人の察知する危険は、命の危険などわかりやすい危機ではないため、警戒を解除することがうまくいかないことです。
常に目の前の捕食動物(熊など)と向き合うかのように満身創痍で生活しているのが、現代人といえます。

ストレスフルな生活は何がまずいかというと、他の生理機能が後回しにされることです。
一時ならいいのですが、続くと色んなところにガタがでてきます。
脳機能も含めた生理機能一般として、免疫機能も下がってきます。睡眠、食事なども後回しになるので、満足な睡眠がとれず、栄養も不足するという悪循環に陥ります。

対処法は、ストレスコントロールですが、簡単ではありません。最優先事項の生理機能を相手にするのですから。
それでここでは、”瞑想”をお薦めするにとどめます。
外的なこと、例えばブラック企業やモラハラパートナーなどから逃げるのも、頑張ってほしいところです。こちらも簡単ではないかもしれませんが…

しかし無力に思う必要はありません。簡単ではないかもしれませんが、対処法はたくさんあるので、不安・恐怖・ストレスについは、項を改めて考察したいと思っています。

十分な栄養

脳をはじめとする生理機能の調節の主役は、それぞれの細胞同士の連携をとる「連絡物質」たちです。自律神経の機能も連絡物質を介しています。白血球から分泌されるものはサイトカインと呼ばれますが、他の細胞たちもそれぞれ連絡物質を介して連携しています。
例えば、脳細胞同士を連携するのは「神経伝達物質」と呼ばれ、前述のセロトニン、メラトニンの他、アドレナリン、ドーパミン、アセチルコリンなど複数の物質があります。中にはホルモンとして機能して、脳以外の臓器に情報を伝えるものもあります。
このように、脳と他の臓器たち(の細胞たち)は連携しながら、生理機能を調節しています。

これらの、「神経伝達物質」がうまく作られなかったらどうなるでしょう?

脳機能も、脳が連携する全身の生理機能もうまく機能せず、ちぐはぐさからの機能低下が起きることが想像できます。
神経伝達物質の作られやすさには、個人差があるので、それは体質的な弱さとして家系で共有されていることにつながります。が、乳幼児期に診断されるような大きなハンディキャップでなければ、自分の生理機能を信じて身体にしっかり働いてもらえるようにすることで、体質的不利は克服できる可能性があります。

ボディートークは体質的不利にアプローチできるメソッドですが、ここでは栄養について書きます。

結論から言うと、私たちのほとんどは身体に必要な栄養が足りていません

上で書いた、セロトニンなどの材料になるたんぱく質を始め、それらの物質を作るために使われる酵素(これもたんぱく質から作られます)、ビタミン、ミネラルなどが十分ないということです。
たんぱく質は「筋肉の材料」と思われがちですが、筋肉”も”であって、全身の細胞や細胞活動すべてに必要不可欠です。獲得免疫で武器となる”抗体”もたんぱく質が原料です。
誤解のないようにしましょう。

また、糖質制限理論で語りつくされていますが、糖質代謝でわずかばかりのエネルギーを得るために、大切なビタミンが大量に消費されます。
なのでこのビタミンの温存は、糖質を減らす利点のひとつですが、同時に、それ以上に、たんぱく質をしっかり摂ることは重要です。

たんぱく質の摂り方は、少しコツがあるのとこどもの発達面でも重要で、また後で書きたいと思っているので、ここではポイントだけお伝えします。

  • たんぱく質は、”量”をしっかり摂ることをめざします。
  • 厚労省が高齢者に老化予防として薦めている摂取量は、毎日[体重㎏あたり1gのたんぱく質]です。高齢者未満の人は当然それより多い量をめざします。ちなみにたんぱく質1gは肉1gとは違います。含有量を調べて自分の体重で計算してみることをお薦めします。
  • たんぱく質は20種類のアミノ酸で構成されており、そのアミノ酸すべてが人体には必要なので、アミノ酸製剤で一部のものだけ摂るより、よりたんぱく質で摂る方が身体にやさしいです。
  • 動物性たんぱく質の方が、人体に適したアミノ酸バランスと言えます。人の身体は植物ではないので。
  • たんぱく質の不足している身体には適応力がありません、サプリよりたんぱく質摂取を優先します。
  • ミネラル分のうち、前述のマグネシウムと、月経のある女性では鉄分は、ほぼ全員足りていませんので、サプリで補うことを薦めます。
  • ビタミンは、こてつ院長ブログなどで勉強してもよいですが、軽く始めるならマルチビタミンでもいいと思います。
  • ちなみに、免疫に重要なビタミンはCとD、代謝全般にはB群とEです。
  • 糖質は積極的にとる理由は栄養的にはほぼありません。”おいしい”と”習慣”くらいです。減らせるなら減らしましょう。
  • 糖質はビタミンの無駄遣いでもあるし、お腹が膨れてほかの栄養(たんぱく質や野菜類)を摂りにくくなるのもデメリットです。

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