糖質の悪影響な面

栄養

前稿(↓)の続きです。

糖質オフの考え方
「糖質制限」、今では知らない人はいない言葉となっていると思いますが、どのようなイメージをお持ちでしょうか?ある人は常識だといい、ある人は危険だという…ネットで見ても、両極端な言説がならんでいるようです。おそらく体質(遺伝と育った環境)の影...

糖質は身体のエネルギーになる重要な物質ですが、摂取しすぎると脂肪になりやすいことを見てきました。

また進化の経緯で、身体は糖質をコンスタントに過剰に摂取することが想定されていないため、過剰な糖質には思わぬ悪影響があることも知られます。

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血糖が高いことの影響

血糖が高い際の不利益を考えます。

短期的には、人体は高血糖にはある程度耐えられます。太古の人類も、果物の結実期など大量の糖質を一気に食べることはあったでしょう。
なので、糖を摂ったらすぐ危険があるということではありません。

しかし、長期(慢性)にわたると、下記のような影響がでてきます。糖尿病合併症として知られるものなどです。

高血糖そのものによる害
  • 血管障害:毛細血管が障害され、血流が悪くなったり出血したりしやすくなる
  • 神経障害:神経細胞や神経に行く血管が障害され、神経の働きが弱まる
  • 感染しやすさ:糖が好きな細菌等が繁殖しやすくなる
  • 尿量が増える:糖を排泄する為、脱水にになりやすい
  • 組織を構成するたんぱく質の糖化:老化現象のひとつ

このうち、感染しやすさと尿量は血糖値が下がれば収まりますが、血行障害、神経障害、組織の糖化は慢性の経過で、血糖値が下がっても回復には時間がかかります(理論上治らなくはないですが、治すのは簡単ではありません)。

糖質オフで血糖値が正常化しても、蓄積した障害の影響が簡単になくなるわけではないので、注意が必要です。

血管障害・神経障害

血管障害は、細い血管ほど影響が強く出ます。

糖尿病3大合併症として知られる、網膜、腎臓、自律神経の他、皮膚などは影響のでやすい臓器ですが、それ以外にも、詰まったら大きな問題の出る臓器(心臓や脳、手足の動脈など)にも影響します。

易感染性:感染しやすさ

感染しやすさは、身体の感染症もそうですが、腸内細菌にも影響します。
善玉菌の多くは、食物繊維や脂質(脂肪酸)を餌にしています。糖を餌にする菌の代表は、真菌類(カンジダなど)です。

腸内環境の悪化は、便通だけではなく、慢性炎症の原因になったり、免疫を混乱させたり、身体の機能にも影響を及ぼします。

脱水になりやすい

血液中の余分な糖を尿で排泄するため、水分も余分に失われるため、脱水になりやすくなります。その代償として喉が渇きます。

適切に飲水できていればいいのですが、気分が悪く飲水ができない時などは危険が高まります。
場合によっては、脱水と高血糖により、体液の恒常性が失われ「ケトアシドーシス(参照:wikipedia)」をきたすため、注意が必要です。

また、そもそも高血糖で水分が失われているので、糖分を含む飲料を飲むと余計高血糖・脱水が悪化し、容易にケトアシドーシスをきたすことが知られており、「清涼飲料水ケトーシス(ペットボトル症候群)」と呼ばれています。

糖分の多い食品の中でも、ジュースは(口当たりのいいスポーツドリンクなどは特に)危険というわけです。

組織の糖化

身体を構成するたんぱく質に糖が結合し、機能を損ないます。
組織の酸化とともに、老化の原因と考えられています。

たんぱく質は常に新陳代謝していますが、新陳代謝の速度と糖化や酸化速度のバランスで、老化現象が進むというイメージを持つとわかりやすいです。(参考記事:たんぱく質推しなわけ

インスリン量が多いことの影響

糖は消化吸収されると、インスリンの働きによって、血管内から細胞内へ移動します。

糖が増えればインスリンが増え、下がってくればインスリンが減るという調節によって、血糖値を一定に保っています。
この機能がうまく働かなくなるのが、糖尿病という病態です。

(インスリンについては前稿も参照にどうぞ)


インスリン分泌には、ふたつの機序があります。

  • 基礎分泌:一定の範囲の血糖値に対応して、一定のインスリン分泌があります
  • 追加分泌:食事から糖(やたんぱく質)が吸収されると、追加でインスリンが分泌します


糖は身体に必要な物質なので、基礎分泌によって一定量は常に細胞内に糖が取り込まれます。
1型糖尿病(インスリン分泌が足りない病態)の人が、糖質オフをしても、インスリン投与がゼロにできないことが多いのは、この基礎分泌分を補うためです。

一方、追加の分泌は多いことで、不都合が生じます。
2型糖尿病(インスリンの効き目が落ちる)は、追加分泌に対して細胞側が「もうこれ以上取り込めません」と根を上げた状態とイメージできます。

インスリンの量が多いことの害
  • 脂肪の蓄積・分解の抑制 ⇒ メタボリック症候群
  • Naの貯留(水分の貯留) ⇒ メタボリック症候群
  • インスリン抵抗性  ⇒ メタボリック症候群
  • 反応性低血糖:インスリンが効きすぎて、逆に低血糖になる

メタボリック症候群

インスリンの量が慢性的に多いほど、その作用によって、脂肪の蓄積やNa(水分)の貯留=高血圧といった、メタボリック症候群の可能性が高まります。

大量のインスリンが細胞に働きかけることで、インスリンの効き目が落ちてくることが知られ、インスリン抵抗性と呼ばれています。
2型糖尿病はインスリン抵抗性によって、「インスリン分泌はある(又は増えてる)のに、効き目が十分ではなくなり、血糖が高い状態が続いている」という病態です。


インスリンは栄養を細胞内に取り入れるホルモンです。なので、一般的にインスリン量が多いと太ります。
しかし日本人は遺伝的に、インスリン抵抗性が生じやすいため、太る前に糖尿病になりやすいと言われます。

日本人に欧米人のような肥満体が珍しいのは、その前に糖尿病になり細胞が栄養を取り込みにくくなるからと考えられます。

反応性低血糖

これは一般に、筋肉量のあまりない子供や女性に多くみられます。


食べたのもが糖質に偏っていると、糖は一気に消化吸収され血液中に入ります。

糖の吸収に合わせ、インスリンの追加分泌が起き、血糖値は下がってきます。しかし、追加分泌されたインスリン値が下がってくるまでには、少しタイムラグがでます。

すると血糖が下がってもインスリンが効き続け、血糖が危険なラインまで下がることが生じます。


症状は、軽いと食後の眠気程度ですみますが、重いと低血糖性の痙攣を生じることもあります。
よくあるのは、耐えがたい空腹感、手足のしびれ、思考の鈍麻などが起き、不機嫌、イライラしたりします。

昼食の前、多くは昼食後~夕方にかけて見られます。
職場や学校でのパフォーマンスが下がり、不機嫌をまき散らすことで対人関係を損なうリスクも出てくる病態です。

子供の反応性低血糖

低血糖性の痙攣まで起きるのは多くは子供です。
ただし脂質代謝メインの乳児ではなく、離乳後、糖質メインの食事に身体が慣れたあとの年代で、おきやすくなります。

典型的には、夜疲れてあまり食事をとれず、何も食べずに、または何とか炭水化物だけ食べて寝てしまって、明け方痙攣してしまう、という経過です。
食の細い子のほうがリスクがあります。


食前に子どもがイライラしたり癇癪起こしたりも、血糖が下がっている可能性が高いです。
お菓子を与えるとおとなしくなるかもしれませんが、下に書いたようにマッチポンプです。

甘いものを食べさせるほど癇癪をおこしやすくなるのは、血糖値の問題かもしれません


反応性低血糖(らしき症状)が起きてしまったら、速やかに糖質を摂ることが必要なのですが、それではまたインスリン追加分泌が起き、マッチポンプです。
本当は、予防したほうがよい病態です。

この病態は、糖が急激に消化吸収されることが原因でおきます。
根本的な解決策は、糖が急激に吸収されない食生活ということになります

糖が急激に消化吸収されない食生活とは、インスリンの追加分泌を少なくする食生活です。
具体的な方法は、次項:失敗しにくい糖質オフの始め方で。

まとめ

血糖が高くなること、インスリン分泌が多いこと、それぞれによって身体には不都合があります。

その両方を抑えるのに、最適の方法が、食事から入る糖を減らすことと言えます。


前稿で書いた通り、糖質は大切であるからこそ、身体のたんぱく質を使って必要分を作ることができます。
たんぱく質が満たされていて、エネルギー源になる脂質があるならば、食事の糖は理論上ゼロでも大丈夫なように、身体は作られています。(実際に糖質ゼロは難しいですし、おすすめもしませんが)

とすると……、食事の糖は減らすことが、健康に暮らすためには正解と言えそうです



次項:失敗しにくい糖質オフの始め方 に続きます。

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