私は、個人の生まれ持った(遺伝的)生理機能を余すところなく使う(不調を感じずに生きられる)ためには、十分なたんぱく質が摂取されている必要がある、と考えていて、以前、たんぱく質の盛り方記事を書きました。
そこでは「プロテイン食品」については触れていなかったので、取り入れ方について考えを書いてみます。
ちなみに、プロテイン(=protein)とは、英語でのたんぱく質のことですが、記事では栄養素としてのたんぱく質ではなく、日常語としての「精製したたんぱく質を添加した食品」のこととして記載します。
たんぱく質の消化吸収のしくみのおさらい
胃、小腸、消化液の材料はたんぱく質
たんぱく質は、口の中で細かく砕かれたあと、胃腸で消化されアミノ酸まで分解される栄養素です。
主に小腸で消化される糖質や脂質と違い、3大栄養素のうち唯一胃で消化されます。(注:糖質は口=唾液でも消化されますが、よく噛むことが条件です)
このことは、本来はたんぱく質は消化されやすい(=もたれにくい)栄養素ということです。実際、内視鏡医の医師からは、胃内に未消化で残っているのはたいてい糖質で肉類はない、と聞きます。
でも「たんぱく質を食べるともたれる」という方はわりと多くいます。その理由はなんでしょう?
低たんぱく食の影響があると……胃腸が弱る
たんぱく質は胃、小腸で消化液(酵素)によって、消化、吸収されます。
そして、胃、小腸の細胞も、酵素も、材料はたんぱく質です。
つまり、たんぱく質の摂取が少ない状態の人は、胃、小腸の細胞が弱り、消化液が少なくなります。
また、消化液(酵素)は、よく使われるものが多く作られる調節をされているので、たんぱく質を食べつけていないと、たんぱく質の消化酵素がなお少ないという状態になっています。
これは、低たんぱく状態への胃腸の「適応的変化」で、たんぱく質を消化できない体質ではないので、勘違いしてはいけません。
動物はたんぱく質の消化吸収ができずに生きる事はできないので、誰でも本来は肉が食べられる身体です。
ただし、たんぱく質が消化吸収しづらい状態は、たんぱく質をとらないと治せない…自縄自縛の状態なので、少しづつたんぱく質の摂取量を増やしながら、身体の適応的変化を待つことが必要です。
たんぱく質は食べ過ぎる心配が少ない
たんぱく質の摂取量は、消化吸収力とは別に、たんぱく質を利用する細胞側でも調節されていると考えられます。
メカニズムははっきり分かってはいませんが、「食欲」として調節されているように思います。
「食べたいものが、身体が必要としているもの」というのは正しくて、食欲を、何をどのくらい食べるかのバロメーターにするのは、理にかなっています。
たんぱく質の他、脂質、ビタミンミネラル、食物繊維などは、食欲で調整されている栄養素です。
しかし、糖質(糖類)は例外ですので、注意が必要です。
一方、たんぱく質や脂質は際限なく食べる事ができません。満腹感が得られやすくまた持続しやすいためです。
そしてこの満腹効果は、一日単位ではなく、中長期的にも効いてきます。
このように、食事のたんぱく質は食欲による調節でうまくいきますが、プロテインを摂るときは少し事情が違うため、注意が必要です。
プロテインを摂るさいのコツ
簡単に飲める/食べられるところに注意
消化はできたとしても、身体が代謝できない量のたんぱく質だったのでしょう。必要以上の量には意味がなく、身体はそれを拒絶するという教訓が得られました。
私はその後、プロテイン1日10gまで減らし、少しづつ増やす方針に変更して、現在も継続しています。
これは、プロテインあるあるの失敗だと思います。
1日60gのたんぱく質を食事にプラスするということは、肉で換算すると200~300gを毎日今までの食事にプラスすることです。
食材にして考えると、ありえない量ですが、プロテインだと簡単に飲むことができてしまいます。
本当の意味でプロテインが「飲める」とは、消化吸収だけでなく、身体が代謝し利用できることです。
代謝に負担がなく利用できていれば、食欲が落ちたり、体調が悪くなったりはしません。
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ネットで「プロテインが体に合わなかった」と発信している人の多くにこの失敗がみられます。
簡単に摂れるからといって、急ぎすぎず、量を測り、身体がどこまで適応しているかを見積もりつつ増やしていくことが肝要です。
プロテインの種類
昨今、厚労省がたんぱく質を推し始めたためか、今やプロテインは一般的なスーパーでも買える食品になっています。
昔のイメージで「まずい」と思ってはもったいないほど、おいしい製品が多いです。
代表的なものには
- 飲料(ドリンクになっているもの、粉状態のもの)
- ヨーグルト、ゼリー
- スナック(栄養バー、チップスなど)
などがあります。
また、プロテインの材料の種類として
- ホエイ(乳清)、ミルク
- ソイ(大豆)、ライス(米)など植物
- エッグ(卵)
などがあります。
他に、たんぱく質の食品として、コラーゲンやアミノ酸製品もあります。
おすすめは…
プロテインの種類としては、ホエイ(乳清)一択です。値段、味、アミノ酸のバランス、どの面でも一番優秀です。
以前も書きましたが、人の身体は植物ではないので、豆など植物性のアミノ酸バランスは動物(人)の身体にとって、同じたんぱく質量でも効率が落ちます。
ホエイ(乳清)とは牛乳の液体の部分(ヨーグルトの上澄み)で、牛の身体を作るのに十分なアミノ酸バランスとなっています。
同様に卵も鶏の身体を作るのに十分なアミノ酸バランスですが、味の点でホエイプロテインにかなわないらしく、商品としてもあまり見かけません。
ゼラチンやコラーゲンもたんぱく質の一種ですが、プロテイン代わりに摂るには値段が高くつきます。
効率よく、たくさん流通しているため値段も手頃で味がよいホエイを、おすすめします。
含有量をみる
たんぱく質摂取量はいきなり増やせないので、食事でもプロテインでも、ざっくりとは量を把握することが必要です。
食事はある程度食欲で測ってもいいと思いますが、上に書いた通り、プロテインは量を決めてとり入れた方が失敗が少ないと思います。
- 殆どのプロテイン製品には、「商品1個にたんぱく質○g」「△△g中たんぱく質○g」と記載があります。
- 例えば、プロテイン飲料であれば「1本中たんぱく質15g」とか、粉のプロテインであれば「付属スプーン1杯でたんぱく質7g」などです。
アミノ酸商品との違い
たんぱく質とは、アミノ酸が結合した物質です。
プロテインとアミノ酸の違いは、分解されているかいないか、です。
商品としての違いは、消化が必要かどうかということで、アミノ酸は消化が必要ないのでそのまま小腸から吸収されます。消化の負担がなく、効率よく摂り入れることができるのです。
なので、アミノ酸はお得に感じますが、注意点があります。
プロテインは実際のたんぱく質から成分を精製したものですが、アミノ酸製品の多くはアミノ酸を工業生産したものになります。アミノ酸は20種類あるので、そのバランスのとり方によって内容が変わってきます。
動物でも植物でもないバランスなので、栄養素としてといり入れる際には、偏りが生じやすくなるところに注意が必要です。
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よくあるアミノ酸製品には、BCAA(分枝鎖アミノ酸)とEAA(必須アミノ酸)があります。
必須アミノ酸(EAA)とは、身体で合成できないため食事からとらなければならないアミノ酸のことです。EAAは9~10種類のアミノ酸を含み、BCAAはそのうち3種類のアミノ酸です。
必須アミノ酸を摂り入れることは効率よく栄養を満たすように思われそうですが、身体が必要としているアミノ酸はEAAやBCAAだけではなく、20種類全部です。
アミノ酸製品だけをメインにしてしまうと、身体が必要なアミノ酸バランスを崩す可能性が高まり、体調を壊しやすくなります。
アミノ酸は、消化の負担がなく効率よい栄養素ですが、食事のたんぱく質やプロテインの補助として使う方が安全です。
具体的な摂り入れ方を、次稿に書いていきます。
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