失敗しにくい糖質オフ②実践編

栄養

前稿での失敗パターンを踏まえて、失敗しにくい糖質オフの方法を考えます。

失敗しにくい糖質オフ:その① 失敗のパターン
こちらの記事の続きです。糖質はオフしたほうがよさそう…とは思うものの、糖質制限は危険だ、続かない、痩せないetc、様々な反対意見があります。それらの懸念を解きほぐしながら、安全な糖質オフの導入を考えてみます。...


※なお、糖尿病で治療中の方は、薬との兼ね合い等で注意点があるので、このまま取り組まないようにお願いします。

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糖質オフの進め方理論

前稿にも書いた通り、一言でいうと、「糖質オフとは、たんぱく質を消化吸収代謝できるようになったら、少しづつエネルギー代謝を糖質から脂質にシフトしていくこと」となります。

まず、たんぱく質、脂質を消化できるようになる


“そもそも糖質を減らせる状態じゃない”人の多くは、低たんぱく食に慣れていて、たんぱく質を食べると気持ち悪くなったり不調を感じたりします。

前稿に書いたように、たんぱく質や脂質が代謝できない先天的な病態もあり得ますが、頻度はごくごくまれで、子供時代に普通にたんぱく質や脂質(母乳やミルク)が摂取できていた人は、可能性は低いです。

殆どは、たんぱく質や脂質を代謝しにくいように“適応”が起きているだけなので、また代謝ができるように適応すれば大丈夫です。

適応には場合により年単位の期間がかかります
少しづつ食べられるたんぱく質を増やしていきましょう。

参考
 ↓

親と子のたんぱく質の盛り方 
“肉食系”を自認している健康な方以外のすべての人、特に慢性疾患にり患してる方、多くの女性、こども、老人、炭水化物依存な男性などは、意識的にたんぱく質摂取を増やすことをお勧めします。たんぱく質摂取は、1回きりではなく“生活習慣”とし...


糖質オフすると、血糖の維持は主にアミノ酸(たんぱく質)を原料にした糖新生で行われます。
脂質代謝に適応するために使われる酵素の材料もたんぱく質です。

なのでまず、たんぱく質を十分消化吸収できることが、第一段階となります。

ゆっくり糖質オフを導入


たんぱく質が消化吸収できるようになったら、また元々たくさん食べられる人は、この段階から始めます。

糖質オフの目的は、糖質の悪影響を減らすことなので、“血糖値を爆上げしない=インスリンの追加分泌をできるだけ減らす”ことを目指します。

なので、考え方としては、

  • 糖質の摂取量を減らす
  • 糖質摂取の回数を減らす
  • インスリンを分泌させにくい食べ方をする

の3通りがあります。
この3通りを組み合わせて、減らしていくのが効率的です。

食事“習慣”の転換


糖質オフの食事方法は、従来の食事概念にこだわってしまうと、うまくいきません。

概念の転換として、“主食”とおかずという発想からの脱却おやつは甘いもの(又はせんべいなどの糖質)という発想からの脱却が必要です。


なので自身で、特に無意識に刷り込まれている“主食と副食”という概念を書き換えていく必要があります。
食事(特に栄養価の高いおかず類)を、ご飯とそのお供と考えないようにするという事です。


また、おかずだけ食べていることを「行儀が悪い」と考える人もいるかもしれません。

会席やコース料理では主食は最後に出てくることも多いですし、そもそも日本以外の国の食文化では“主食=炭水化物”という概念がない国がほとんどです。

思い込みにとらわれて、自分にダメ出ししないようにしましょう。


主食という概念をなくしていくと、良いことがあります。減塩です

ご飯を食べるためのおかずではなくなるので、塩分が薄くても美味しく食べられるようになります。
おかずは、“これでご飯が美味しく食べられる”という発想をやめて、“おかずそのものが美味しい味付け”にすることをお勧めします。

実践編

たんぱく質の増やし方


たんぱく質の増やし方は、糖質の減らし方よりも、時間、手間がかかると思います。

摂取の最終目標は、厚労省が「高齢者のフレイル予防に必要」と推奨する「一日体重(㎏)あたり1g」が最低ラインと言えます。

成長期や病後など需要が大きい場合は、「一日体重(㎏)あたり1.5~2g」くらい摂取できます。
糖質と違い、たんぱく質は“食欲”によって摂取の調節を受けるので、「食べたい」「お腹がすいている」と感じる場合は、摂取量を増やしてもよいでしょう


具体的方法は、過去記事を置いておきます。

親と子のたんぱく質の盛り方 
“肉食系”を自認している健康な方以外のすべての人、特に慢性疾患にり患してる方、多くの女性、こども、老人、炭水化物依存な男性などは、意識的にたんぱく質摂取を増やすことをお勧めします。たんぱく質摂取は、1回きりではなく“生活習慣”とし...
動物性たんぱく質と植物性たんぱく質
今まで「たんぱく質をとりましょう」という記事を書いてきて、意図的に黙ってきたことがあります。「動物性と植物性の違い」についてです。私の周りでも、たんぱく質を薦めると、豆腐を食べたり“ソイプロテイン”を買ったりする人が結構いますが、...
プロテインの取り入れ方
私は、個人の生まれ持った(遺伝的)生理機能を余すところなく使う(不調を感じずに生きられる)ためには、十分なたんぱく質が摂取されている必要がある、と考えていて、以前、たんぱく質の盛り方記事を書きました。そこでは「プロテイン食...


たんぱく質摂取ができるようになってきたら、糖質オフを始める段階です。

  • 糖質の摂取量を減らす
  • 糖質摂取の回数を減らす
  • インスリンを分泌させにくい食べ方をする

この3通りを組み合わせて、減らしていくのが効率的です。

インスリン分泌をさせにくい糖質の摂り方:おかずファースト


食べ順ダイエットなどと言われたりしますが、「野菜を先に食べること」で同じ糖質量でも、血糖値の上がり方が緩やかになる(インスリン追加分泌をへらす)ことが、実験で観察されています。

野菜の食物繊維が効いていると考えられていますが、おそらく、脂質やたんぱく質でも似たような効果はあると思います(特に、脂質は胃内の滞留時間を延ばすので、糖が小腸で急激に吸収されるのを防ぐでしょう)。

つまりシンプルに、「糖質は最後に食べればいい」ということです。おかずファースト、糖質ラストです。


ご飯を後にするとお腹がいっぱいになりにくいので、たんぱく質を増やすためのおかず増量が、やりやすくなります。

たんぱく質(と野菜)のおかずを心ゆくまで食べ、満足してから、最後にご飯やデザートなどを食べると、糖質量を減らすストレスが減りますし、少ない量でも満足できます。

お腹がいっぱいになっていれば、主食の糖質やデザートを抜くことも可能です。

糖質摂取“回数”を減らす方法


例えば、糖質を「3食+おやつ+飲料」で摂っているなら、どれかひとつからオフすることを考えます。


この場合、血糖の上がり方(インスリン分泌の多さ)で考えると、糖質入り飲料からやめるのが王道です。
人工甘味料は血糖値を上げない甘味ですが、大規模疫学調査では肥満の解消について「効果がない(または逆に肥満が悪化)」との結果が出ています。

この際、甘い飲み物はすっぱりやめてしまうことをお勧めしたいです。
どうしても飲みたいなら、食事のあと、胃内が空っぽの時を避けて飲むと、多少は血糖爆上げを抑えることができるかもしれません。

次に、オフしやすいのは朝食です。

朝は生理的に血糖の上がりやすい(糖新生の活発な)時間帯です。糖質分をとらなくても血糖値は維持できるので、血糖低下による空腹を感じにくいのです。

成長期が終わった世代は、お腹がすいてなければ朝食抜きでもよいでしょう


成長中の子供やお腹がすいている場合は、糖質の少ないもの(卵料理や牛乳など)のみの食事がおすすめです。
脂質を摂ることで腹持ちがよくなり、午前中快適にすごせます。


果物や野菜は糖質を含むので、それだけだと、インスリン追加分泌の作用で昼前にお腹がすいてしまいます。
昼前の空腹が強いと、「朝食が足りなかった」と考えがちで、逆効果になってしまいます。
食べるなら、たんぱく質おかずの付け合わせ程度に、少しだけにする方がよいです。
上にも書きましたが、甘いジュースはやめましょう。


伝統的(?)和朝食は、塩辛いおかずでご飯を食べるスタイルになりがちです。
このタイプの朝食にこだわりのある方は、朝食の糖質オフは難しいかもしれません。

まず、昼や夜での糖質オフを先行しながら、朝のご飯をへらしていくための“朝食概念の書き換え”に取り組む必要がありそうです。
おかず類の塩味を薄くしておかず比率を高くしたり、ご飯の代わりに納豆やカリフラワーなどを使って糖質オフに成功した人もいます。
焦る必要はないので、自分がストレスを感じない方法を考えるとよいと思います。

晩酌系の方は、夕食の糖質オフがしやすいかもしれません。

たんぱく質、脂質、野菜など、つまみ類には糖質オフをしやすいメニューが多くあります
飲酒をしない人でも、つまみやおかずを食べ、主食を抜くことが割と簡単にできます。
ただし酒のつまみは塩分の濃いものが多いので、薄味を心がける方がおいしく食べられます。

しかし、実は飲酒時の糖質完全オフは難しい可能性があります。

飲酒により、肝臓はアルコールの代謝にかかりきりになります(飲酒量によるかもしれませんが)。
肝臓での糖新生が追い付かなくなると、だんだんと血糖値が下がり傾向になります。
低血糖での糖質欲求を感じやすくなり、アルコールの作用で抑制も難しくなってくると…飲酒後の締めの糖質大量摂取につながると考えられています。

なので、つまみとして少しづつ糖質を摂り、血糖の低下を抑えることで、酔った後の歯止めのきかない糖質大量摂取を予防でき、結果的には糖質量をへらせる可能性が高まります。

前稿にも書いた通り、昼食の糖質オフが一番難易度が高いです。主に社会的な理由で。

弁当ならいいのですが、外食では食べるものを探すのが大変です。
が、昼の糖質オフができると、腹持ちがよくなるので、午後のおやつもやめやすくなります。
食後の眠気も楽になるので、糖質オフができる環境なら、ぜひ取り入れてほしいです。


こどもの給食も、糖質オフはしにくいです。

以前別稿に書きましたが、こどもは同年齢集団を手本に社会性を身に着けるため、大人以上に同調圧力にさらされています。
糖質をオフするように学校に求めることもできるとは思いますが、ひとりだけ友達と違うものを食べることのストレスは想像以上に大きい可能性があります。

子供は代謝もよく、運動量も多いので、昼食の糖質による血糖上昇の悪影響は、そこまで大きくないと思われます。
給食はみんなと同じにして、朝食夕食やおやつで糖質オフを取り入れた方がよいと思います。

おやつの糖質オフはわりと簡単です。

おやつの概念を変えるだけです。
ゆで卵、唐揚げ、ナッツ類、小魚、サバ缶など、糖質の少ないものを選べます。

人工甘味料を気にしないなら、市販のプロテインバーなど、たんぱく質を補充できる商品も多くあります。

なお、人工甘味料は“肥満”については効果がない可能性が高いです。
なので痩せたい人はむしろ砂糖入りを選ぶ方が安全と、個人的には思います。たんぱく質補充や血糖上昇を抑えるためには、その限りではありませんが。

甘味料の種類にもよりますので、興味のある方は調べてみるとよいと思います。


どうしても砂糖入りが欲しい場合は、たんぱく質や脂質を同時にとれる洋菓子系をお勧めします。
甘さ控えめでもおいしく食べられるケーキやプリン、ハイカカオのチョコレートなどをうまく使って、糖質欲求をなだめるとよいと思います。

焼き芋やおせんべい、和菓子、果物など、糖質量が多くたんぱく質脂質の少ないものは、おやつよりも食後のデザートにすることをお勧めします(食べ順効果があるので)。


上にも書きましたが、糖質の多いジュース(スポーツドリンクやフルーツジュースも例外ではありません)は、飲まないに越したことはないです。

食物繊維も豊富な果物そのものと、果物ジュースは、体内への糖質の吸収され方が全く違います。
果物の価値はジュースにするとほぼなくなってしまうので、気を付けてください

糖質摂取“量”を減らす方法


毎食の糖質量を減らす方法です。

簡単なようですが、単純に主食量を減らすと、不満感や空腹感が残って継続が難しくなります。
なので、たんぱく質系のおかずを増やし、お腹がいっぱいになったらその分の主食を減らすのがよいでしょう。

食べたいおかずを増やすだけなので、我慢がいりません。この場合も、おかずが先、主食が後の食べ方が効率的です。

難しいのは、丼物や麺類、カレーなど、おかずと糖質を同時に食べるメニューです。

これらの場合も、できるだけ、野菜など先に食べるものを別に用意したり、主食を減らすように盛り付けたりの工夫ができます。
または、たまの「糖質摂取デー」専用にして、普段は食べないようにするとか、嗜好とライフスタイルに合わせてうまく調節しましょう。

前稿にも書きましたが、糖質の多いメニューを低糖質にする方法(レシピ)はたくさん考案されています。
しかし頑張りすぎると力尽きるリスクがあるので、はじめは元々糖質の少ないメニューを増やすほうが楽で長続きしやすいと思います。

料理が好きな方は、「低糖質」や「糖質制限」などのキーワードでレシピ検索して、取り入れてみるとよいと思います。


また、主食と別に食べることで薄味に慣れてくると、おかずの甘味も不要になってくると感じます。
習慣で砂糖を使っていた煮物なども、みりん少しでおいしく感じるようになったりします。
野菜をゆっくり加熱する事で、甘味を引き出すこともでき、料理の砂糖の使用を減らせます。

どのくらいオフすればよい?


何度も言うように、はじめから完全糖質オフをめざすと、失敗しやすくなります。
具体的にどのくらい減らすのが、よいでしょう?

糖質制限介入実験(海外)では、糖質量を1/2~1/3に減らして数か月後にさらに減らすことで、副作用もなく安全にできた、と報告されています。

なので、いきなり半分くらいオフはそれほど危険ではないと考えられます。

具体的には…

  1. ジュース類をやめる、食べ順を変える
  2. 回数、量を合わせて、糖質量半分くらいに減らす
  3. さらに減らせそうなら、減らす
  4. 最終的には、完オフも可、だけど目的やライフスタイルに合わせて調節

この1→2→3→4の順で、それぞれ数週~数か月かけてかけてステップアップするくらいでよいと思います。

最終的な糖質摂取量は、ライフスタイルと嗜好性と体調によって、個人差があると思います。

2型糖尿病で無投薬をめざすなら、糖質制限界の重鎮江部康二氏の推奨する「スーパー糖質制限(糖質摂取量一日60g以下)」を目標にすることになるでしょうし、アンチエイジングなど目的に糖質を極力へらす「断糖(一日5g以下)」に取り組む人もいます。
(ただし糖尿病で治療中の方は、自己判断で糖質を減らすのは危険です、別稿にまとめます)


一般的な日本人の食生活での糖質量は一日300g前後と言いますので、それを半分にするだけでも、体調のよさを感じやすいと思います。
たんぱく質摂取量ほど厳密な決まりはないので、自分なりの考えで、継続できる方法を探していくのがよいでしょう。

実践のまとめ

まとめます。

  • たんぱく質や脂質を消化吸収できるようになってから、糖質オフに取り組む
  • おかずファースト、主食ラストの食べ順を心がける
  • 糖質オフのやり方は、糖質摂取回数を減らす方法、糖質摂取量を減らす方法があり、両方をうまく組み合わせ、全体としてのオフをめざしていく
  • 食事の満足感が減ると継続が難しくなるので、頑張りすぎず、自分の嗜好に合わせて取り組むのがよい
  • 主食をしっかり食べるのが正しいという概念を書き換えることが大事
  • 糖質オフの始め方は皆共通だけど、最終的なゴールは人それぞれ

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