小学生のみなさん、夏休みどのようにお過ごしでしょうか?
実は、夏休みはおねしょを治すには、もっとも適した時期です。特に、小学校2~4年生くらいで、おねしょの悩みのある方は、取り組んでみてはいかがでしょう?
この稿では、おねしょのメカニズムと、お家でできるトレーニングについて書いてみます。
おねしょは発達とともに治る
多くの場合、おねしょは年齢と共に治りますが、それにはいくつかの要素が関わっています。
- 抗利尿ホルモンの分泌が増える
- 機能的膀胱容量が大きくなる
- 尿道括約筋が鍛えられる
これらのすべてが年齢と共に変わる=発達によって変わります。
おねしょの有病率
有“病”というのもおかしいですが、率は、小学校入学時でおよそ10%、卒業時で0.数%と言われます。
よそに言う事でもないので知られていないと思いますが、10%は結構高い率です。
小学生なのに…と嘆く必要はなく、しっかり発達を遂げていければ大丈夫ということです。
逆に、卒業時にまだおねしょがある、特に頻繁(ほぼ毎日とか)、または、小学生になっても頻度が減らない(増える)ならば、排尿機能の異常などが考えられます。
小児科や小児につよい泌尿器科(あるいは小児外科)で診てもらう事をお薦めします。
また、小学生の場合、ストレスが排尿機能に現れる子も多いようです。
日中のおもらし、頻尿、おねしょなどが急に現れる/増えるような時は、ストレス因が隠れていることもあります。
地震の後や、両親の不仲(離婚)などの状況でおねしょになった子を診たことがあります。
その場合は、おねしょトレより、ストレス因対策を考えた方がよいでしょう。
抗利尿ホルモン;バソプレッシン
抗利尿ホルモンとは、尿中の水分を減らす、つまり、尿を濃縮させるホルモンです。身体の水分量の調節の役割があります。
脳の視床下部という部位でつくられ、下垂体後葉から分泌します。
このホルモンは、成人では夜間に分泌が多く、夜間の尿を濃縮し尿量を減らしています。朝の尿が濃い色をしているのはそのためです。
そして、赤ちゃんではあまり働きがないため、赤ちゃんは昼夜での尿の出方や濃さにあまり差はありません。
このホルモン分泌は、視床下部という生体リズムなど自律機能をつかさどる部位で作られていることが、ポイントです。
脳が、子供から大人に成熟してくる時間経過で変化するということです。
抗利尿ホルモンの夜間に多い成人型分泌になるのは、およそ小学生ごろと言われ、遅い子では高学年頃までかかるとされます。
つまり、小学生の間は夜間に尿量が多いため、夜間尿がある(おねしょor夜トイレに起きる)のは異常ではないと言えます。
抗利尿ホルモンには点鼻薬があり、おねしょの治療として処方されることがあるのは、このためです。
しかし、おねしょのメカニズムはホルモンだけではありません。
機能的膀胱容量
これは、膀胱がどれだけの尿をためておけるか、の指標です。機能的というのは、物理的な大きさの問題ではなく、膀胱機能としてどうか、という意味です。
この機能的膀胱容量を考えるのに最適(と私が考えるイメージ)は、ゴム風船です。
ゴム風船は、新品の時は固くあまり空気が入りませんが、がんばって空気を入れていくとゴムが柔らかくなって簡単にたくさんの空気を入れられるようになります。
機能的膀胱容量が小さいのはまだ固い風船、機能的膀胱容量が大きいとはゴムが柔らかく膨らみやすい風船をイメージするとよいでしょう。
つまり、身体の成長とともに膀胱自体は大きくなりますが、尿をためる経験をつまなければより多い量は入るようにならない、という事です。
尿道括約筋
括約筋とは、口を閉める筋肉という意味の筋肉です。膀胱の出口を閉めて、排尿するしないを決めています。
膀胱も平滑筋という筋肉でできていて、平滑筋は不随意筋(自分の意思で動かすことのできない筋肉)ですが、尿道括約筋は平滑筋の部分と、随意筋(自分の意思で動かすことのできる筋肉)の2部構成になっているのが特徴です。
膀胱の筋肉はある程度尿がたまると自動で収縮し(その時尿意を感じます)ますが、括約筋は自分の意思で閉めておくことのできる筋肉です。排尿するタイミングは自分でコントロールできます。
このコントロールを身につけるのが、いわゆるトイレットトレーニングです。
お家でできるおねしょトレーニング
さて、本題に入ります。おねしょのメカニズムに合わせて対応を考えます。
がまんトレーニング
まず、がんばるべきは「尿をためる体験」です。
おねしょで悩むお子さんに話を聞くと、尿をためる体験が不足してる子に良く出会います。
昼間もちょこちょこトイレに行き、学校でも毎休み時間ごとにトイレに行っていたりします。
聞くと、入学時点でたまに日中のおもらしがあったために、そうするようにしつけられているケースや、トイレトレーニングを早めにがんばってしまい、とにかくもらさないようにトイレに行く習慣をつけた、という方が多いです。
この習慣は、日中のおもらし確率を減らすかも知れませんが、膀胱に尿をためる体験ができないため、おねしょが続きやすくなるという弊害があります。
*
夏休みに、お出かけしない日を使って、できるのが「がまんトレーニング」です。
やり方は簡単ですが、本人に主旨を説明して自ら取り組んでもらうことが、必要です。
夏は家にいる時間も長くなるし、身体も冷えにくいので我慢がしやすくなります。
小学校2~4年生が向いているのは、抗利尿ホルモンの分泌が安定してくる時期に重なるのと、5~6年生で始まるお泊り学習にむけてモチベーションが高まりやすいからです。
幼い子では、本人のモチベーションが上がらないので、うまくいきにくいです。
また、失敗したときに、がっかりしたり叱ったりしてしまうと、本人のモチベーションに影響するので、そこは気をつけてください。
おねしょカレンダーをつけたりして、減ってくるのが見える化すると、余計がんばれると思います。
失敗しにくくなるための注意点
おねしょを減らすための工夫はいつ行ってもいいのですが、がまんトレと一緒に行うと、より効果を実感しやすくなると思います。
番外編;身体が冷えると治りにくい
冬の寒い日はトイレが近くなるのと同じで、冷えはおねしょと相性がよいです。
身体を冷えにくくすることと、冷えない身体づくりも大事です。
身体を冷やさないのは、冷たいものを食べすぎないこと(かき氷など)、冷たいドリンクを飲みすぎないことです。
熱中症予防のためにエアコンは使った方がいいですが、それも冷えすぎない使い方を心がけてください。
冷えない身体づくりには、上に少し書きましたが、脂質とたんぱく質を摂ることが重要です。
日本人の場合、とくにたんぱく質摂取量が少ないので、意識したいところです。エネルギー産生には鉄分も重要なので、鉄分の多い“赤身の肉”がベストです。
(参考;親と子のたんぱく質の盛り方)
*
また、こどもの冷え体質には漢方薬があります。小建中湯という方剤で、小児夜尿症の保険収載があります。
一般には、虚弱児(痩せがちで身体が弱い、食が細い、風邪をひきやすいタイプ)、食後の腹痛やお腹をくすぐったがる子などに、合っている薬です。
小児科に受診すると処方してもらえるものですが、漢方薬になじみの薄い医師には断られるかも知れません。その際は、一般薬局でも扱いのある薬ですので、薬剤師さんに相談してみるとよいでしょう。
食欲が増し、たんぱく質摂取量が増えてくると、身体の冷えは気にならなくなりおねしょもしにくくなってきます。
コメント