たんぱく質推しなわけ

セルフメンテナンス

前2つの記事で、たんぱく質の量が足りてないかもしれないと、わかっていただけたかと思うのですが、たんぱく質をとるとムキムキになるとか太ることを、心配される方がいます

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食べるだけでムキムキにはなれない

実際、ボディビルダーの方々はすごい量のたんぱく質を摂っているので、「たんぱく質はムキムキ」は間違っていないように思えますが、違います。

“たんぱく質を摂る”ことと“ムキムキになる”ことの間には、明確な因果関係はないのです。
ムキムキな人はたんぱく質を大量に摂ってるけど、逆は真ならず、ということです。

どういうことかというと、ムキムキになるためには、食べる以上に熾烈なトレーニングが必要なので、食べるだけではなれないのです。
また、筋肉の増大には男性ホルモンの役割も大きいため、女性はなお筋肉が大きくなりにくいです。

なので、ムキムキになるには、効率のよいやり方と相応の根性が必要なので、一般人が少したんぱく質の摂取を増やしたところで、簡単に達成できることではないのです。

“太る”ではない基準:アンチエイジング

別の心配で、たんぱく質を摂ると太るという方がいます。
“太る”の定義にもよりますが、“体重が増える”ということであれば、確かにそうです。

しかし、“見た目”については違います。

ムキムキとはならなくても、たんぱく質は筋肉の新陳代謝にも使われます。
地球にはそれなりの重力があるので、トレーニングをしていないつもりでも、筋肉には負荷がかかっています。つまりたんぱく質という材料があれば、筋肉はほどよく鍛えられます。これは、引き締まり姿勢がよくなることを意味します。

また、たんぱく質は皮膚の新陳代謝にも使われます。
皮膚のキメ、弾力(重力にあらがう力)、保湿力などは、たんぱく質なしでは得られないものです。年を取って、皮膚が重力に負けてくるのは、支えるたんぱく質が十分新陳代謝できてないという事です。

加えて、たんぱく質は体内の代謝で直接脂肪の生成には使われないので、脂肪に変換されやすい糖質よりは、ずっと脂肪になりにくい栄養素です。

“体重”という一点にこだわってしまうと、これらの新陳代謝が滞るようになり、痩せてはいても見た目のエイジングが進むことになるかもしれません。

若いうちは、新陳代謝の性質上、たんぱく質不足の影響が見えにくいのですが、年齢が上がってくるとごまかしが利かなくなり、いろいろな意味での“曲がり角”として現れてくると言えます。

もちろんエイジング過程(老化)は、見た目だけに起きるわけではありません。
全身の組織、内臓にも関連しますし、生理機能のほとんどもたんぱく質を介して行われているので、組織の劣化とともに機能の低下をきたします

エイジングと新陳代謝:なぜ曲がり角は中高年から?

エイジングについては、医学的には「身体を構成する“たんぱく質”の糖化と酸化」の結果と考えられています。
水や糖質や脂質ではなく、たんぱく質(アミノ酸)の、ということを覚えておいてください。

糖化や酸化は、生きている以上ある程度は避けられないので、身体はそれを修復する機構をもっています。
そのひとつが“新陳代謝”です。

新陳代謝とは、「古く劣化したたんぱく質を、新しいたんぱく質(アミノ酸)で置きかえる過程」です
新しいたんぱく質が十分量必要という、イメージはわくでしょうか?

実際、新陳代謝されているたんぱく質量(成人)は、およそ200g/日と言われます。
食事でとる目標量の≪体重あたり1~1.5g≫と比べると、相当多い量です。
その差は、オートファジー(参考:wikipedia)という過程で、自らの古くなったたんぱく質を分解し再利用しています。

つまり、古くなったたんぱく質の再利用がほとんどを占める中で、食事から摂った新しいたんぱく質(アミノ酸)が少しづつ置きかえられていく、という事です。

これは、なぜ“曲がり角”は中高年になってやってくるのかの、説明になりますね。

若いうちは、身体を構成するたんぱく質がそれほど劣化していないため、それらを再利用しても、あまり質は低下しないけど、年を取るとそうはいかないという事です。

エイジングは構造と機能の両方に

上に“エイジング(老化)”過程は「組織の劣化とともに機能の低下」と書きました。
組織が劣化することはイメージしやすく、アンチエイジングとうたわれる商品のほとんどは、見た目にアプローチするものです。
しかし、機能の低下を忘れてほしくないのです。

実際に老後が見えてきた世代の人にとって、一番避けたいのは、「見た目が衰えること」ではなくて、「できていたことができなくなること」ではないでしょうか?

身体の機能を担うたんぱく質は、身体の構造を維持するたんぱく質と違って目に見えないため、衰えがイメージしにくいものです。

具体的に大事なものをいくつか挙げると…
 ・キャリア蛋白:血管内で栄養素や薬などの物質を運ぶ
 ・神経伝達物質・ホルモン:生理機能の調節
 ・代謝酵素:エネルギーを作る、肝臓での解毒、新陳代謝~生命活動のすべて
 ・免疫:以前の記事参考にどうぞ
 ・消化酵素:栄養素の吸収
などがあります。

多くの慢性疾患は、これらのたんぱく質の働きが十分ではなくなった時におきる、という事が想像できるでしょうか?

慢性疾患はたんぱく質不足?!劣化?!

生理機能は、神経などによって網の目のようにフィードバック機構が張り巡らされていて、簡単にはバランスをくずさないようになっていますが、たんぱく質の働きが十分ではなくなると、少しづつ生理機能にずれがでてきます
自律神経失調なんて、まさにそのずれを表した言葉と言えます。

フィードバック機構は網の目のように張り巡らされているので、どこのバランスが崩れるかによって、症状として現れるものは無数にありえます。

おそらく、遺伝的素因(体質)によってウイークポイントは人それぞれなので、違う症状に見えますが、本質的には「生理機能のフィードバックのバランスが保てない状態」として同じと言えると思います。

ちなみに、たんぱく質の不足は、絶対的不足(作られない)だけでなく、相対的不足(新陳代謝に不十分なので劣化した材料を再利用している)の両方がありえます。

すべての慢性疾患の人も、慢性疾患になりたくない人も、たんぱく質の十分な供給なしに治療は意味をなさないと、心得た方がよいと思います。

たんぱく質摂取は一日にしてならず

身体の機能を担っているたんぱく質は、ターンオーバーが早い傾向はありますが、身体の構造を維持しているたんぱく質と同じように新陳代謝しています。
つまり、今使われているたんぱく質は、身体の中で使われていたものの再利用分が大半という事です。

なので、長年にわたってたんぱく質摂取量をキープできてきた人はとても有利です。
病気やダイエットや信仰の理由などで、たんぱく質摂取が少ない時期のあった人は、今から今後のために積極的にたんぱく質を摂取することをお薦めします。
曲がり角がきた時に、フィードバックの押さえが効かなくなる可能性が高まるからです。

また、上に消化酵素もたんぱく質だと書きました。
たんぱく質摂取の少ない時期を経ると、身体はたんぱく質をあまり代謝しないように変化します。フィードバックが働いて低たんぱくに適応する、ということです。たんぱく質を消化する酵素も少なくなります。

このことは、たんぱく質摂取のハードルになることがよくあります。
小食な人や菜食傾向の人は「たんぱく質(特に肉)を食べるともたれる」と言いますが、消化力が落ちていると考えられます

身体の生理機能のフィードバック機構はものすごく優秀なので、かならず適応してきてくれますが、少なからず時間がかかることは覚悟が必要です。
まさに「一日にしてならず」、高齢者になった時に推奨量が食べられる身体でいることをめざして、今から「きちんと食べる」ことを始めていただくことをお薦めします。

おまけ;ボディートークでは

ボディートークは、身体の(生理機能とそれ以上の概念を含めて)バランスの乱れを解消していく施術です。
身体のフィードバックは、たんぱく質を介する以外にも、神経や電解質や、意識といったものを介していると考えられるので、たんぱく質単独よりも早く変化を感じることができるかもしれません。

  • ボディートークに興味のあるかたは→どうぞ

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