鉄分・貧血に関わる検査データのよみ方

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つづいて、鉄分に関わる検査データの読み方を見てみます。

前稿はこちら。

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検査データの読み方

貧血・鉄欠乏に関連する検査データの読み方です。健診などで測った際には参考にしてみてください。

血算;赤血球数(RBC)、ヘモグロビン(Hb)値

血算とは、血液中の白血球(WBC)、赤血球(RBC)、血小板(PLT)といった血球の数を測る検査です。血液検査の中でも最も一般的なものです。
ある日の私の検査結果を例示します。

基準値・単位

検査データについている「基準値」とは、正常値という意味ではなく「健康な人の95%はこの中に入る」というような数字として算出されたものです。なので、外れ値があったとしても、即異常とは言えません。

基準値はそれぞれの検査機器によって多少のばらつきがあります。
「単位」も検査機器によって違いますが、読む数字は同じようになっています。

赤血球数や血色素量は、血液単位量(1μl・dl)中の量の数字で、濃度の概念です。
およそHb値<12g/dlであれば貧血気味と考えます。鉄欠乏性貧血では赤血球数はあまり減りません。
(医療現場ではその他の指標や症状も診て診断するので、これだけではないのですが…)

また、鉄欠乏性貧血の時はHb値と連動して、赤血球のサイズが小さくなることがよく見られます。
赤血球の大きさは、MCV値(平均赤血球容積)と計算されます。
Hb値がそこそこあっても、MCV値が小さければ貧血を疑った方がよい場合があります。

血清フェリチン値

藤川徳美氏の著書でフェリチンが紹介されて以来、栄養マニアの方々の間ではフェリチン値は有名な指標になっています。

血清フェリチン値の単位は、ng/ml(=μg/l)で、某大手検査会社の基準値は[3.6-114]で男女共通となっていますが、実際には、男女別のフェリチン値には違いがあります。

それを調べた論文がありました。(金森 きよ子他;生物試料分析 Vol. 38, No 2 :2015)
大学生・大学院生(20~24歳)男性:36名、女性:108名のデータです、健康で女性は月経のある世代の成人という属性です。

調査人数は少なめですが、はっきり傾向が認められます。グラフをお借りします。

血清フェリチン値(大学生・大学院生 男性:36名、女性:108名)

ぱっと見で、男女にはものすごい差があります。興味深いことに、男女とも山は2つあるように見えます。

男性の上の山は100以上なので、おそらく71‐80をピークにしたひとつの山と思われます。男性の半分近くは、フェリチン100以上です。

片や、女性の下の山は12未満です。女性は21‐30をピークにした山と、限りなく0に近い人のふたつの属性があると考えられます。女性の約1/3は12未満です。

ちなみに、同じ論文に同じ被検者のHb値のグラフもありました。

ヘモグロビン濃度(大学生・大学院生 男性:36名、女性:108名)

男女のピーク値には2g/dl程度の差がありますが、貧血の基準:Hb<12g/dlを満たすのは、女性でも少数、男性は0です。
フェリチン<12μg/lだった女性(約1/3)の殆どは、「貧血」の検査では異常値を出していないということです。

ここから、月経のある女性の場合、貧血の検査でひっかからなくても鉄欠乏状態の人が相当数いる、男性で貧血はかなりレアという事がわかります。
そして、男女ともに貧血の数字よりも、鉄欠乏の方が深刻(または先に現れる)という傾向が見えます。

つまり、貧血の検査(血算)だけでは、鉄欠乏の状態はわからないため、追加でのフェリチン検査が必要ということです。

血清BUN(尿素窒素)

たんぱく質の代謝産物は尿素という形で腎臓から排泄されます。それを検査で測るのが尿素窒素です。

BUNの基準値

某大手検査会社の基準値はBUN:8~22mg/dlですが、『標準生理学第8版』にはBUN正常値:15~20mg/dlと記載されています。
“健康な”成人の95%が含まれる数字が基準値なので、現在日本人の中には健康であっても生理学的に正常とされる数字に満たない人が多数いると解釈もできます。(実際には、基準値には男女差の考慮がないのでその影響はありえます)

一般にBUN値は、たんぱく質摂取量に比例しますので、普段の食事のたんぱく質摂取量を反映する検査値です。
また、外傷や出血など組織の修復が活発に行われるときにも上がり、たんぱく質摂取が少ないと下がります。

このことから、BUN値は「たんぱく質摂取量+組織の代謝量」を反映している数字です。

私は外科手術を受けたときに、1日絶食し、前後で血液検査を受けた経験がありますが、たった1日の絶食でBUN:16mg/dlから9mg/dlまで下がりました。1日単位での食事内容が鋭敏に反映するようです。

組織の代謝量が多いほど高い数字になるのですが(一般に筋肉量の多い男性は女性より高くなります)、その日の食事中のたんぱく質量の影響も強く受けるということです。
検診前数日だけ頑張る人は多いですが、BUNはそういった数日のスパンで検査値が変わりやすい指標です。

なので、1回の検査値にとらわれることなく、毎年(検診など)のトレンドを把握するくらいの意識で見たほうがよさそうです。

たんぱく質摂取+組織の新陳代謝として、BUN:15~20mg/dl以上を目指していけるとよいと思います。

BUN値の読み方の注意点として、もうひとつ重要なことがあります。
医療現場では、BUN値は腎機能の指標としての意味のほうが重視されています。

尿素は腎臓から排泄される物質なので、腎機能が下がるとBUN値は上がってくるのです。
腎機能は腎臓そのものの状態だけではなく、腎臓がろ過する血液量によっても左右されます。つまり、脱水によっても影響を受けます。この意味でもBUNは日々刻々変化する検査値といえます。

腎機能を評価するには、BUN値以外にも、クレアチニン(Cr)値や電解質値などの値から総合的に判断するので、かなり専門的です。判断は検査をした医師に任せるほうがよいでしょう。

また、医師は腎機能や脱水という目でBUN値を評価すると思いますので、たんぱく質摂取を増やして上がってきているなら、「たんぱく質を増やしています」と伝えたほうが正しく判断してもらえると思います。

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